2011年11月11日
紙幣が運ぶ、シンガポールストーリー
初代大統領のシンガポールへのビジョン
第4次紙幣の「肖像」は、ユソフ・ビン・イサークで、シンガポール独立前は国家元首として、また1965年の独立後は初代大統領として活躍しました。マレーシアのペラ出身で、子供の頃家族とともにシンガポールへ移住し、学業優秀、スポーツ万能の青年期を過ごします。植民地時代が終焉を迎える頃、当時低落していたマレー人コミュニティーの自立とプライドを取り戻すため、シンガポールでマレー語新聞「Utusan Melayu」を発行しました。大戦中は一時中断するも、戦後直ちに復刊させています。多民族・多文化が共生する国家となることこそが、シンガポールが繁栄するための道であると早くから気づき、あらゆる社会活動にも貢献していたことから、最初の国の象徴として選ばれたのです。そんな氏とその考え方が、シンガポール発展の青写真であり、今後も引き継がれるシンガポールの理想として紙幣に刻まれています。紙幣の裏を見ると、$2は教育、$5は緑豊かなガーデンシティ、$10は国民が愛するスポーツ、$50はシンガポールから生まれる芸術、$100は国の将来を背負う青年達、$1,000は国民のための強い政府、$10,000はバイオテクノロジーなど先進技術をテーマとしたデザインになっています。
外国から訪れる人々が最初に出会う国産品はお金といわれるほど、紙幣や貨幣は、その国の技術力や現状を示す最初の入り口とも考えられています。シンガポールの紙幣は、それが存分に反映されていると言えるでしょう。
入場料:大人 S$10、子供・シニア(60歳以上) S$6
開館時間:10:00〜20:00 (年中無休)
Singapore Coins and Notes Museum
40 Pagoda Street, Level 3, 058456
TEL:6222-2486
文= 桑島千春、写真=Eugene Chan
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.200(2011年11月11日発行)」に掲載されたものです。