2011年11月11日
紙幣が運ぶ、シンガポールストーリー
「金は天下の回り物」、現金は一日に何度も我々の手を介し、忙しなく財布を出入りします。何気なく目にしているシンガポールドル紙幣の図柄やデザインに織り込まれたストーリーを辿ります。
「肖像」シリーズ、1999年9月9日にローンチ
現在流通しているシンガポールの紙幣は、肖像シリーズと呼ばれ、ミレニアムに向けて発行されました。その前の旧紙幣は、シンガポール造幣局(BCCS)が設立された1967年以降、蘭シリーズ、鳥シリーズ、船シリーズがそれぞれ発行され、これが第4次紙幣となります。
肖像シリーズでは、$2、$5、$10、$50、$100、$1,000、$10,000札が発行されており、そのうち、$2、$5、$10札はプラスティック製ポリマー紙幣に変わっています。
シンガポールの紙幣は、世界で一番精巧とされるスイス紙幣の偽造防止法を手本にデザインされ、15にも及ぶ精巧な仕掛けを額面に施しています。例えば、額面の銀色のホログラムパッチは、額面数字がアニメーションする複雑なホログラムで、「キネグラム」という名称があります。また裏面にはセキュリティスレッドという銀色の点線が入っていますが、光に透かすと実際は一本の金属の線が紙に織り込まれており、公用語4言語でシンガポールと極小さい文字で書かれています。その他、透かしや紫外線に発光するインクが使用されています。肖像は、深刻凹版で詳細に描かれていますが、肖像をデザインに入れ込む理由のひとつは、人間の表情の細かさを偽造するのは特に難しく、一目見て違和感を感じやすいからなのだとか。
オーストラリアで開発されたポリマー紙幣は、透明な合成樹脂のフィルムに白いインクを印刷し不透明化したうえで、通常の印刷を行い、その上に流通しても磨耗しにくくする保護膜をコーティングしています。また特殊ホログラムを入れる部分は印刷をしないため、透けて見えます。生産コストはかかるものの、偽造しにくく耐久性が高いため、使用頻度が高くて寿命の短い低額紙幣に導入されています。