シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX熱帯綺羅TOP南国の夜空に輝く行先案内人「南十字星」

熱帯綺羅

2013年7月15日

南国の夜空に輝く行先案内人「南十字星」

 

シンガポールで見る南十字星

スクリーンショット 2015-07-02 12.28.43

南十字星は、日本ではほとんど観測できないにも関わらずその名は広く知られています。天の川を銀河列車が旅する宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』で旅の終わり近くに多くの乗客が降りていったのも“サウザンクロス”でした。南十字星は、大正時代から昭和初期にかけての文学作品などに見られる南洋への憧れの象徴であったことも少なからず影響していると考えられます。
一方、南十字星を観測できるシンガポールではというと、「船関係の人以外は、あまり関心がないでしょうね」と語るのは、シンガポール天文学会(The Astronomical Society of Singapore、以下TASOS)の会長を務めるアルバート・ホーさん。子供の頃、兄の小さな望遠鏡で日本ではすばるの名で知られるプレアデス星団を初めて見て感激し、天文に興味を抱くようになったそうです。
シンガポールで南十字星を見るのに良い場所としてアルバートさんが勧めるのは、シンガポール本島の8kmほど南にあるセマカウ島。トゥアスのごみ処理施設で燃やされた灰など廃棄物の埋立処分場がある島です。個人で島に渡ることはできませんが、環境庁や認可を受けた団体が主催するバードウォッチング、スポーツフィッシング、天体観測などのツアーに参加する形であれば誰でも行くことができます。
TASOSでもセマカウ島での天体観測ツアーを年に数回実施。5月中旬に実施されたツアーでは天候にも恵まれ、天の川がきれいに見えたとのこと。もちろん南十字星の姿も捉えることができたそうです。
スクリーンショット 2015-07-02 12.28.38南十字星をシンガポール島内で見るなら、高層ビル群の明かりなどの影響を受けない、南向きに空が広がるスペースを探す必要があります。チャンギ・ビーチやボタニック・ガーデンがお勧めだそうです。南十字星を見るのに最適な時期は4月後半から6月前半で、4月後半であれば夜10時半から11時頃、6月前半であれば夜7時半から8時頃にちょうど南中する姿を見ることができます。南中した時でも高度は30度にも満たず、かなり低め。7月半ばごろの南十字星の南中時刻は午後5時ごろです。午後8時ごろであれば西に45度ほど傾いた状態の南十字星を見ることができます。
8月後半以降、シンガポールの夜空で南十字星の姿を見ることはしばらくできなくなります。次に見られるようになるのは11月の初めごろ、朝5時頃から南十字星が上り始めるのを見ることができます。クリスマスから年末にかけての時期には、朝6時ごろちょうど南中した南十字星を見ることができます。その後は1ヵ月で約2時間ずつ南中の時刻が早まっていくので、夜間見るには4月前半まで待つことになります。

 

 

南十字星への憧れは、南の夜空に輝くその姿を見ることができる機会が限られているところにもあるのかもしれません。

 

スクリーンショット 2015-07-02 11.07.31

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.238(2013年07月15日発行)」に掲載されたものです。
文= 石橋雪江
写真=The Astronomical Society of Singapore

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX熱帯綺羅TOP南国の夜空に輝く行先案内人「南十字星」