2020年1月4日
大手日系消費財メーカー
リーダー育成にコミットした企業だけが人材獲得競争、その先にある事業成長を手にすると言っても過言ではない。
ビジネスをドライブする人材を採用し、育て、惹きつけ続けるタレントマネジメントとは何か。海外現地法人におけるタレントマネジメントを成功に導く要諦は何か。
JAC Recruitment が、 次世代リーダーの育成にコミットしている企業を紹介する。
大手日系消費財メーカー。シンガポールに東南アジア統括拠点を構え、事業のグローバル展開を加速している。
東南アジアで1,000人以上の従業員を有する。人事制度は事業戦略に大きく関わるため、社名は非公開。
なぜ制度の抜本的改革が必要だったか
~人事は戦略に従う~
消費財メーカーとして、新興市場で事業を拡大していくうえでの競合は日系だけでなく、外資系や現地企業である。また、各国の消費者ニーズやビジネス慣習を深く理解して、ビジネスを拡大していくには現地の優秀な人材の確保が欠かせない。つまり、アジアにおける人材獲得競争の相手も日系企業ではなく、外資系企業や現地の有力企業だ。現地の優秀な人材を惹きつけ、活躍してもらうためには、彼らが魅力と感じる組織づくりが必要であった。
改革に必要不可欠なこと ~トップの覚悟~
歴史ある企業での組織構造や人事制度の改革は容易ではない。海外進出が早かった同社には40年以上の歴史を持つ海外現地法人も存在していたこともあり、現地法人の同意を得ることは困難を極めた。それでも変革を推し進めることができた背景には、人事ヘッドの後ろ盾に本社役員クラスの「海外事業を加速していくうえで、組織及び人事変革は欠かせない」という強い信念があったからだ。
表面的に他社の人事制度のベストプラクティスを真似するのは容易である。しかし、人事制度の抜本的改革には必ず痛みを伴い、制度変革を人事部だけで推し進めることはできない。トップの覚悟が同社を動かした。
タレントマネジメント5つの要素
人こそが未来の事業をつくる。そのためには、適切な人材を適切な場所にアサインし、育てていくタレントマネジメントが欠かせない。トップの覚悟のもと、外部から登用されたメンバーと既存の人事メンバーが協同して、ゼロから新たな人事制度を構築していった。同社のタレントマネジメントフレームワークは「人員計画」「採用」「育成」「評価/報酬」「タレントレビュー」と5つの要素から構成されている。
1.「人員計画」
多くの日系企業では、昨年比ベースなどを基準にした大雑把な人員計画が立てられることが多いが、同社は厳格なポジション管理を徹底し、事業開始時点から必要な職務と数を特定している。
2.「採用」
Job description(職務記述書)に沿った採用を徹底。優秀な人材を採用するために、給与条件などは社内のポジションを参考にするのではなく、競合を含めた多国籍企業の給与相場を参考に競争力のある報酬を設定している。
3.「育成」
形式的な階層別研修や専門スキルの研修だけではなく、現状と将来期待する役割と能力のギャップを埋める研修を実施。さらに将来事業を担うリーダーを育成するためのリーダーシッププログラムを開発した。
4.「 評価/報酬」
職能資格制度(年功序列)ではなく、職務に基づいた業績評価とプロセスにおけるバリュー評価を実施し、それに応じた報酬を支払う。
5.「タレントレビュー」
一定の役職以上の職員をマトリックスでプロットし、成長を促すアサインメント(人員配置)によって次世代リーダーを育てる。なお、それ以外の役職員に対してもビジネスを推進するために必要な支援や異動を行う。
「日本からではなく、 海外発で人事変革を」
本社の強いコミットメントのもと、東南アジアでの事業拡大を実現するために人事機能を強化する必要があった。
アジア統括拠点の人事責任者は、あえて日本本社から送らず、グローバル企業(外資系)で人事ヘッドを務めた経験者を外部から登用し、大きな権限を付与した。
Associate Director
松本 勇太さん
大阪大学卒業後、人事系コンサルティングファームに入社。採用・組織開発コンサルティングに従事。その後、外資系企業にて人事を経験。2015年に来星しJACリクルートメントへ入社。日系企業向けのリクルートメントコンサルタントとして活躍しながら、3部門のマネジメントを担う。シンガポール国立大MBA取得。