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社説「島伝い」

2020年1月28日

今年のシンガポールを見通す

 シンガポールの2019年の国内総生産(GDP)成長率(速報値)は、前年比0.7%と2010年代で最低の成長率でした。2014年以降はほぼ3%台と緩やかな成長を続けていたシンガポール経済ですが、昨年はあまり元気がなかった1年でした。
 
 ただ、昨年12月にシンガポール金融管理庁(MAS)が公表した調査結果などを見ると、民間エコノミストの多くは経済の先行きについて明るい見通しを持っていたようです。昨年第3四半期の外国人入国者数が483万人と四半期ベース最多を記録するなど観光市場が好調なこともあり、今年は少しずつ上向くとの見方でした。アメリカと中国が12月半ばに貿易交渉の第1段階で合意に至り、米中貿易摩擦問題にひとまず進展がみられたことも好材料でした。しかし、年明け早々にアメリカとイランの間で緊張が高まる出来事が相次ぎ、世界中が不安の目で事態の推移を見つめています。中東地域には元々さまざまな不安定要素があり、今後も予断を許さない状況が続きそうです。
 
 日本では、世界的な動きや国レベルでの出来事の影響を個人や企業の活動においては感じづらいものですが、シンガポールでは直接的に感じることがしばしばあります。国が今後どう動こうとしているか、特に在住者は知っておく必要があります。
 
 リー・シェンロン首相が新年メッセージでも言及していたように、政府は、昨年の国内経済が低調だったことを受けて4月からの新年度で企業の生産性引き上げと労働者の能力向上のための措置を講じるほか、家計向けに生活費負担を和らげる措置を取る予定です。詳細は2月18日にヘン・スイーキアット副首相兼財務相が発表する来年度政府予算案の中で明らかになるでしょうが、政府が経済へのてこ入れを行うということは、今から頭に入れておいた方が良いでしょう。
 
 また、今年は総選挙が実施される可能性が高く、リー氏からヘン氏へのバトンタッチが行われるとみられています。昨年末に与党・人民行動党(PAP)は第1書記長補でもあるヘン氏の新年メッセージを発表しました。その大半はリー首相の新年メッセージの内容を踏襲したものでしたが、冒頭では、昨年6月に自らが提唱した “Singapore Together” が浸透しつつあることに触れ、より多くの国民の声を聞きながら、国民とともに未来のシンガポールを作ろうとしている第4世代の政界リーダーの姿勢を明確に打ち出していました。次年度の政府予算案の内容とともにヘン氏の今後の発言は、今年のシンガポールを見通すためのヒントにもなるでしょう。

(千住)

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