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社説「島伝い」

2019年12月31日

シンガポールに起こり得る変化

 2020年という新たな年を迎えるにあたって、この先のシンガポールにどのような変化が起こりうるのかを考えてみました。まず頭に浮かんだのは、現首相であるリー・シェンロン氏から次期首相候補であるヘン・スイーキアット氏への首相交代。そのタイミングとみられる次回総選挙は2021年4月までに開催されることになっていますが、時期が早まる可能性についてリー首相も既に示唆しており、今年行われる確率はかなり高いでしょう。
 
 1990年にシンガポールの初代首相リー・クアンユー氏から第二代首相のゴー・チョクトン氏へ交代した時は、既にクアンユー氏の息子であるシェンロン氏が事実上の後継者となっていました。首相の座が世襲になっているとの批判的な声もあり、次の首相交代には、リー家の政権というイメージからの脱却もかかっているといえそうです。
 
 首相が交代しても、シンガポールの対国外政策は基本的に大きく変わらないでしょうが、対国内の政策には一段の変化があると考えられます。例えば、現在の「シンガポール・コア」政策では、労働力に占めるシンガポール人の割合を3分の2にすることを目指していますが、今後この割合が引き上げられて4分の3になる、といったこともあり得るでしょう。
 
 次に考えられる変化は、一層の電子化やオンライン化。決済サービスのペイナウは、個人間だけでなく法人間での決済にも使われていますが、2019年8月には、学校の授業料や罰金など政府機関への納付金の支払いにも利用可能になりました。また、電子決済システムを運営するネッツ(NETS)のATMカードが、マレーシアの一部店舗で決済に利用できるようになったというニュースも記憶に新しいところです。さらに、外国人在留者の自動車運転免許証の更新手続きが12月よりオンラインで可能になりました。就労ビザの申請も今やオンライン化され、申請が却下されても以前のようにアピール・レターを添えて再申請したら承認された、といったアナログなケースは聞かれなくなりました。
 
 シンガポールでは2018年の特殊合計出生率が1.14と、人口維持に必要とされる2.1を大きく下回り、少子高齢化が急速に進んでいます。従来は人手をかけていた業務を、最新技術を駆使してシステム化することはその対策の一つであり、今後もさまざまな領域で一層進んでいくでしょう。社会の変化が国の政策にどのように影響し、さらには外国人である我々にどう影響するのか、今後も動向をしっかり見ておく必要があります。そのヒントは今号の2019年重大ニュースにもいろいろありそうです。 (千住)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.353(2020年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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