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社説「島伝い」

2020年2月28日

新型コロナウィルス 国としての対応の遅速

早くから水際対策を行ったシンガポール

 新型コロナウィルスに関するニュースを見ていると、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が猛威を振るった時を思い出します。シンガポールで最初にSARS患者が確認されたのは同年3月、その後5月中旬までの2ヵ月ほどで238人の感染が確認され、うち33人が亡くなりました。
 
 今回、シンガポールで新型コロナウィルスへの感染者確認が発表されたのは1月23日。水際対策がいち早く実施されることになり、1月28日には中国・湖北省を直近で訪問した人の入国を禁止、同29日からは乗り継ぎも禁止しました。さらに2月1日からは過去14日間に中国本土に滞在歴のある人の入国を禁止、中国発行の旅券を持つ人の乗り継ぎも拒否することになりました。中国からシンガポールへ帰国する国民、永住者、長期滞在許可取得者は、帰国後14日間の休暇取得が義務付けられました。中国からの入国を制限する国・地域は2月初めまでに60ヵ国を超え、複数の国がシンガポールと同様に中国からの入国を禁止。中国だけでなく感染者が確認された国からの入国も当面禁止と、より厳しい措置が取られた国もあります。
 

対応の遅速がみられる日本

 一方日本では、武漢滞在中の1月初めに発熱した男性から、帰国後に新型コロナウィルスの陽性反応が出たことが同16日に発表されました。その後、武漢からの旅行者でも感染が確認され、同28日には、武漢からのツアー客を乗せたバスの運転手の感染も判明したものの、入国制限がかかったのは2月1日からで、湖北省滞在者や居住者の入国のみ禁止されました。
 
 日本がすぐに制限しなかったのは、旧正月と重なっていたことも大きいでしょう。韓国人観光客が昨年から急減している上に、かき入れ時に中国人観光客が減っては、インバウンド関連のビジネスにはかなり深刻な打撃になります。現に、1月末以降日本各地で観光客数が減少し、商談会、展示会といった大規模イベントの延期やキャンセルで実害を受けているケースもあります。ただし、東京オリンピックを半年後に控えたこのタイミングで、目の前の状況を悪化させないように取った対応が、より重要なことを台無しにしてしまうのでは本末転倒です。
 
 特に日本人は、周りの状況を見てどうするかを判断しがちですが、今回のような状況では、信頼できる複数の情報源からデータを集めて、客観的かつ迅速な判断を下すことが大事。日本としての対応をいち早くはっきり見せることが、国民はもちろん他国にとっても安心につながり、結果的に日本をさまざまな面で守ることになるのではないでしょうか。

(千住)

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