シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP新型コロナウイルス:パンデミックと収束した後への備え

社説「島伝い」

2020年3月27日

新型コロナウイルス:パンデミックと収束した後への備え

 今年に入って感染拡大が続いている新型コロナウイルスですが、3月11日にWHOが世界的な大流行状態である「パンデミック」と認定しました。この言葉を使うことは、一般市民の不安を煽ることになったり、パニックで騒動が起きる可能性もあることから、WHOは使用に慎重でしたが、3月に入って感染拡大が中東やヨーロッパ、北米でも見られはじめ、世界的に警戒を強めるべきとの判断になったようです。
 
 シンガポールでは、3月4日までに中国、韓国、イラン、北イタリアへ最近渡航したことがある外国人について、乗り継ぎも含めて入国を禁止する措置が取られました。日本への渡航も同3日より自粛が勧告され、本稿執筆時点の3月半ばまでには日本からの入国禁止には至っていないものの、今後禁止された場合はどう影響するか、予め確認しておくに越したことはないでしょう。
 
 また、新型コロナウイルス対策として、在宅勤務が奨励されたり、学校の課外活動やスポーツ大会などが制限され、市民生活にも影響が見られます。経済活動においても、客足が落ちて売上げ減に苦しむ店舗や、イベントの相次ぐキャンセルで対応を迫られる企業や団体がある一方で、食品デリバリーやビデオ会議システムといったサービスのニーズは急上昇しています。
 
 今まさに起きているさまざまな変化にも対応が必要ですが、新型コロナウイルスとは直接関係のない変化にも注視しなければなりません。例えば、3月3日に国会での予算審議においてジョセフィーヌ・テオ人材開発相は、エンプロイメント・パス(EP)の最低給与基準を5月1日付で月額3,600Sドルから3,900Sドルに引き上げることを発表しました。大学新卒者の賃金が上昇していることを考慮しての措置で、経験豊富な40代の外国人がEPを申請する場合は最低給与基準のおよそ2倍が必要になるだろう、とのこと。EP更新の場合の新基準の適用は2021年5月からですが、本国からの駐在員や現地採用の外国人が在籍する企業にとっては影響が大きい変化の一つでしょう。
 
 これまでに誰も経験のないウイルスへの対応ゆえ、ピークの山がまだこれから来るのか、あるいは収束に向かい始めるのか、見極めることは容易ではありません。ただ、一つ言えるのは、この新型コロナウイルスの流行によって、さまざまなことが収束した後も以前とは違っていることになるだろう、ということ。目の前の騒動にばかり気を取られがちですが、今後どのような展開になっても対応できるよう、企業も個人も予め複数の選択肢を用意し、備えておく必要がありそうです。

(千住)

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