シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP日本との違いを認識すべき時 ~コロナ禍のシンガポールで~

社説「島伝い」

2020年5月6日

日本との違いを認識すべき時 ~コロナ禍のシンガポールで~

 新型コロナウイルス対策として「サーキットブレイカー」(回路遮断装置)と名付けられた措置が4月3日にリー・シェンロン首相から発表され、同7日から実施されています。すべての学校とほとんどのオフィスを閉鎖し、住民に可能な限り自宅に留まってもらうことで人の移動を極力減らし、感染拡大を抑え込むことが狙いです。くしくも4月7日には日本でも、感染者が急増していた都道府県を対象に緊急事態宣言が出されました。
 
 日本では、初めて法令に違反した場合、指導や警告に留まることがありますが、シンガポールでは国民はもちろん外国人でも初回から罰金や禁固刑が科せられる可能性があります。現在、感染拡大を防ぐためにセーフ・ディスタンシング(人と人が安全な距離を取る)の徹底が図られていますが、日本のような推奨というレベルではなく、1メートル以上の距離を取らないことは取り締まりの対象です。例えば店舗で、列に並ぶ客同士やスタッフ同士が安全な距離を確保できていないと、監視員からの指導だけでなく、罰金の対象にもなり得ます。
 
 新型コロナウイルスにより、あらゆる面で大きな制約を受けていますが、この先どうなっていくのか、誰にも予測は不可能です。初動段階では、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時の経験から、シンガポール政府の対応などをある程度予測できましたが、今の「サーキットブレイカー」の段階は、もはや参考になるような過去の経験もありません。「サーキットブレイカー」が奏功して感染拡大に歯止めがかかり、1ヵ月で解除されたとしても、すぐに経済や社会が従前と変わらない活発さを取り戻すとは考えづらく、先行きは不透明でしょう。4月6日に発表された補正予算では、「サーキットブレイカー」実施に伴う企業や個人へのさまざまな補償が明らかになりました。その多くはまずシンガポール国民のためですが、外国人労働者雇用税の4月納入分の免除や、オフィス閉鎖で在宅での勤務継続も不可能なEPやSパス保持者に関しては、就労パスの要件を下回る月給額への一時的な調整が容認されるといった支援策もあります。外国人としてどこまで支援が受けられるか、政府や各機関の情報を元に把握する必要があります。
 
 一日も早い収束を願いつつも、シンガポールで企業や個人として生き残っていくために、年単位の長期戦への備えがもしまだ十分でなければ、今からでも取り組むべきでしょう。その際、日本の常識や感覚のまま判断しないよう、日本との違いに注意すべきなのは言うまでもありません。

(千住)

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