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社説「島伝い」

2020年6月26日

海外でもコロナ禍を生き抜く術を

 今年1月半ばに新型コロナウイルスの影響が出始めた頃には、世界規模でこれほどまでの事態になるとは、おそらく誰も想像しなかったのではないでしょうか。早い国では2月から、遅くとも4月初め頃までにはほとんどの国で感染拡大防止策として外出の制限や禁止措置が取られ、さまざまな活動が著しく制限されました。国際線の運航は9割以上削減されて国境をまたぐ往来がほぼ途絶え、接客でのサービス提供がメインの小売店や飲食店、各種サービス業などには深刻な打撃となっています。
 
 オフィスワークがほぼ在宅勤務となったことも大きな変化でした。しかもその期間は既に数ヵ月単位に及んでいます。シンガポールでは6月1日にサーキットブレーカー措置が終了しましたが、活動再開は段階的に実施されており、6月2日からのフェーズ1期間は、主に学校関係が再開したことを除けば、多くの部分でサーキットブレーカー期間中とさほど変わりがありませんでした。世界的には感染者が増加傾向にある地域がまだまだあり、油断はできません。今後フェーズ2、フェーズ3と徐々に制限が解除される見込みですが、フェーズ3が明けて経済活動やサービスが全面再開しても、私たちの目の前に広がる世界がコロナ禍以前と大きく異なっていることは間違いないでしょう。
 
 シンガポールでは、5月に入った頃からデング熱の感染者数が急増していることも懸念されています。多くの人々が長時間自宅で過ごすようになり、デング熱を媒介するヤブカ属の蚊にとっては血を吸う相手が増えたのと、家庭から出るごみや汚水の量が大幅に増え、特に集合住宅などでボウフラが発生しやすい環境になっていることが原因のようです。サーキットブレーカーの影響が思わぬ形で現れた例といえるでしょう。
 
 海外で暮らす身にとっては、コロナ禍の中で一時帰国したい時に自由に帰れなくなったことも、不安材料の一つになりました。また、各国政府が実施した給付金などの救済措置の対象が国内在住者のみであったり、あるいは滞在先の国が実施する救済措置を国民と同じように受けられるわけでは無かったり、といったことは、自国以外の場所で暮らすメリットとデメリットの一部として捉え、総合的に考える必要があるでしょう。
 
 今年上半期だけでも、数年分にも匹敵するような大きな変化が起きた後の新しい世の中で、海外にいるメリットだけでなくデメリットを受け入れてでもやるべきこと、やりたいことがあるなら、それを実現し続けて生き抜く術を得るべく、個人も企業もより良い形に変化する好機にしたいものです。

(千住)

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