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社説「島伝い」

2007年5月21日

マネして何が悪い!?

映画や音楽の海賊版、偽ブランドが大量に出回り、知的財産権の保護が不十分だとして、4月に米国から世界貿易機構(WTO)へ提訴された中国ですが、新たな著作権侵害疑惑が発覚、米ウォルト・ディズニー社が北京市当局に告発する事態となりました。

 
内容は、北京市の国営遊園地「石景山游楽園」がディズニーのミッキーマウスなどに酷似したキャラクターを無断で園内に登場させ、集客を図っていたというもの。また同園は「ディズニー(ランド)は遠すぎる。石景山游楽園に行こう!」をキャッチフレーズに、シンデレラ城などディズニーランドに似たアトラクションを園内に設置、ドラえもんやハローキティもどきの着ぐるみまで登場していたようです。

 
当初は「ディズニーランドを参考にはしたが、模倣した訳ではない」と主張していた同園ですが、ディズニー社の告発や各国からの非難を受けて当該アトラクションを撤去。ただし、これも「模様替え」との説明で、問題のもみ消しを図っただけのように見える対処でした。同園は国営であることから、中国政府の今後の対応次第では来年開催予定の北京五輪にも影響を及ぼすのではとの懸念が出ています。知的財産権保護への取組みを対外的にも強調してきた中国ですが、実態はまだ十分とは言えないようです。

 
今回の騒動を伝えるニュース映像に、ドナルドダックに似たキャラクターに触れて無邪気に喜ぶ子供達の姿がありました。ニセモノで子供達を欺くような行為が堂々と行われているのは本当に残念なことです。

 
夢やアイディアといったものは、元手はタダだという言い方が良くされますが、決して無から出てくる訳ではありません。様々な経験を積み重ね、貪欲に知識を学び取り、蓄積したものを活かし、考え抜くということを何度も経てはじめて良いアイディアを生み出すことができます。その価値を認め、権利を保護するために各国で法整備が進められてきており、権利の侵害には厳しく対処しています。そんな、当たり前のことが、当たり前にできて、真の国際社会の一員といえるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.098(2007年05月21日発行)」に掲載されたものです。

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