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社説「島伝い」

2009年5月4日

ルールの存在

先月の「SMAPの草彅剛逮捕」のニュースには、深酒は身に覚えがある人も多く、泥酔してもっとひどい醜態を晒す人だっているではないか、と同情論もかなり多かったようです。しかし、深夜に住宅地の公園で大声を出して騒いで他人に迷惑をかけてしまったのは、社会の一員としてルール違反。社会の秩序が保たれて人々が平穏に暮らせるのも、ルールが守られているという土台があってこそ可能なことです。スポーツでも必ずルールがあり、ゲームに参加しているプレイヤーはルールに従うことが要求されます。同じ土台の上で対等に勝負するために必要なことだからです。格闘技もルールが無ければ競技として成立せず、ただの危険行為になってしまいかねません。

 
ビジネスでも、景気が良い時はルールの存在をそれほど意識しなくても、事が問題なく進んでいくことがほとんどです。ルールが意識されるのは、往々にして何か問題が起きた時や、状況が変わって事がうまく運ばなくなった時。その時になって明確になっていないルールがあった、と慌てないためにも、最初の段階でルールを整備し、定期的に見直す必要があります。ルールはある意味保険のようなもの、とも言えるでしょう。

 
日本では口頭での同意、いわゆる「にぎり」があればあえて明文化しないことも良くあります。また、何か問題が起きても「話せばわかるはず」と考えがちです。しかし、日本の外ではそれが通用しないこともしばしば。ルールに反することを言い出した相手に、「それは筋が違う」と訴えかけようとしても、そのルールが書類の中の一文という形でこの世に存在しなければ、ルール自体存在しないものと見なされてしまいます。

 
問題というのは状況が悪くなって初めて顕在化することが多いものです。問題の対処を迫られるのは頭の痛いことですが、裏を返せば見直しをする良い機会。そのひとつとして、特に海外でのビジネスにおいては、ルールがきちんと明確になっていてそれが誰の目から見てもわかる形で整備されているか確認し、整備が不十分な領域には早急に手を打つことがリスク回避にもなるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.144(2009年05月04日発行)」に掲載されたものです。

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