シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP扉が今開かれた理由

社説「島伝い」

2009年5月18日

扉が今開かれた理由

月中旬から感染者が増え続けている新型インフルエンザ。北米、南米、ヨーロッパ、東アジア、オセアニアなどで感染者が確認され、先週後半には感染者数が全世界で6,500人を超えました。各国で感染防止のための様々な対策が取られていますが、SARSや鳥インフルエンザの流行を経験した東南アジア各国の対応はさすがに早く、域内ではタイでメキシコからの帰国者2名の感染が確認されただけに留まっています。

 
今回の新型インフルエンザは元は豚の間で感染していたA型インフルエンザであったことから、「豚肉を食べても大丈夫なのか」という懸念があり、メキシコ産豚肉の輸入禁止処置を取った国もありました。しかし、インフルエンザウィルスは熱に弱く、きちんと加熱調理された豚肉であればまず感染の心配はないこと、新型インフルエンザは呼吸器系への感染のみで、消化器系など全身感染の可能性のある鳥インフルエンザほど毒性が強くないことから、WHOや日本の厚生労働省、農林水産省も「豚肉・豚肉加工品は安全」との見解を出し、買い控えなどが起きないよう、冷静な対応を呼びかけてきました。

 
そんな中で、5月14日、日本産牛肉・豚肉のシンガポールへの輸出解禁が発表されました。シンガポールの農産物獣医庁に認定された施設のみ輸出可能ということですが、これまで8年近く全面禁止だった牛肉、さらにはこれまで原則禁止されてきた豚肉の輸出までもが認められたのは大きな一歩でしょう。

 
日本産牛肉のシンガポールへの輸入は、2000年3月、日本で口蹄疫が発生したことから禁止され、同年10月に解禁されたものの翌2001年9月に日本で牛海綿状脳症(BSE)が発生、再び禁止されたという経緯がありました。今、この時期に敢えて輸出解禁が発表されたことは少々意外でしたが、日本・シンガポール両国政府の強いメッセージが込められているのではないかとも推察されます。

 
シンガポール在住者にとっても日本産牛肉・豚肉が食べられるのは喜ばしいこと。今回開かれた扉が、再び閉じられることのないよう願っています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.145(2009年05月18日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP扉が今開かれた理由