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社説「島伝い」

2009年4月20日

日本式を通用させるには?

シンガポールで生活していると、日本ではまず出くわさないような状況がしばしばあります。少し前のことですが、デパートのショーケースの上でお持ち帰りしてきたチキンライスをパクつく店員の姿にあ然、ということがよくありました。今でも、客から見えるところで店員が食事をとる姿はよく見かけます。また、レストランで食べ終わっていない皿を何も言わずに下げられてしまった、陳列棚の商品を見ていた客の目の前を店員が通っていった、荷物を抱えた店員に通路で道を譲れと言われた、などで驚いたことがある方も多いでしょう。

 
海外で生活していると、日本ではお店やレストランで当たり前のように受けていたホスピタリティの素晴らしさに改めて気付かされます。品物を購入して「贈り物です」と言うだけで施されるきれいなラッピング、気持ちの良いあいさつ、タイミングの良いサービス、といったものをつい求めてしまいたくなります。

 
人事異動で日本から新たに赴任する方々が多いこの時期、日本の良いものを海外でも生かしたい、と張り切っていらっしゃる方も多いことでしょう。そこでちょっと気を付けたいのが、日本式の取り入れ方。育った環境も文化も異なる現地スタッフに、いきなり日本式を求めてもなかなかうまくはいかないものです。理由は簡単で、日本式のやり方がなぜ良いのかといった本質的なことを日本育ちではない現地スタッフが短期間に理解するのは難しいのがひとつ。もうひとつは、来たばかりの新任者が現地の事情や文化、スタッフの気質、彼らの良さなどを理解する前に日本式のやり方にはめ込もうとするからです。

 
かといって、現地スタッフに迎合して何でも彼らのやり方に従う、というのも考えものです。互いのことを理解するために努力して、互いの持つ良さを生かしながらさらに良いものを作り出せるようにしたいものです。海外というアウェイの地ではホームのやり方が通用しないこともある、と認識した上で、現地のこと、人、ものを自分の目で良く見て、互いの良さが共存できるような方法を確立することが、アウェイでも仕事を成功させる秘訣ではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.143(2009年04月20日発行)」に掲載されたものです。

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