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社説「島伝い」

2014年10月20日

最低限守るべきこと

さる10月14日に、サッカーの日本代表対ブラジル代表の国際親善試合が今年完成したばかりのナショナル・スタジアムで開催されました。試合前から問題になっていたのが、芝がまばらで砂の多いピッチ。ブラジル代表ドゥンガ監督が、「国際標準をはるかに下回る」と、ケガの危険性やボールの転がりの悪さに懸念を示していました。国際サッカー連盟のAマッチの試合であり、両ナショナルチームのベストメンバーがほぼ揃うとなれば、選手や関係者はもちろん、会場に足を運んだ観客やテレビの前で観戦したファンの多くも、国際試合としてのしかるべき基準を満たした試合環境を期待します。中でも選手がプレーするピッチの整備は、最低限守られるべきことの一つでしょう。
サッカーに限らず、多くの人が守るべきと考える「最低限のルール」はあらゆることに存在します。家族や地域における最低限のルールは不文律である場合が多いのですが、ビジネスの場合は最低限のルールを含め互いに同意した内容を契約書という形で明文化します。正当な理由なくその内容を守らないことは、ビジネスのマナーに反します。言うまでもなく、ビジネスは相手があって成り立つもの。自分の立場だけでなく、相手の立場にも立って考えていれば、安易に契約書に反することは起きないはずですが、残念ながら現実にはしばしば発生し、その争議が法廷の場に持ち込まれることも少なからずあります。
14日の試合で両チームの選手たちは、砂で足を滑らせたり、ボールのイレギュラーなバウンドに慌てて対応する場面がありましたが、幸い負傷者もなく、コンディションの悪さをものともしない見事なプレーで5万人を超える観客を魅了しました。年間を通して暑いシンガポールで芝を育てる難しさもあるでしょうが、サッカーの国際試合の会場となる以上、そこでプレーする選手たちのことをまず考え、彼らが安心してその高い能力を存分に発揮できる環境づくりが求められます。世界でも一流の選手たちの素晴らしいプレーを当地でこれから何度も見ることができるようにするためにも、今後の改善が求められます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.267(2014年10月20日発行)」に掲載されたものです。

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