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社説「島伝い」

2014年11月3日

飛躍の兆候

英HSBCの調査による駐在員が望む滞在先ランキングがニュースなどで話題になっています。この調査は毎年実施されていて、今年で7回目。従来は駐在員の経済面や、現地での暮らしについて調査が行われ、それぞれのランキングが公表されていましたが、今年は総合ランキングも発表されました。
経済面のランキングは、駐在員の滞在先での収入レベルや貯蓄、投資パターン、世界経済の影響度などについての調査結果をまとめたものです。ちなみに2010年の1位はロシアで、2位以降はサウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦が続いていました。しかし今年はいずれも10位以下です。一方、ちょっと気になるのがマレーシア。2010年は10位、2011年は17位、2012年は12位、2013年は14位、そして今年は16位と、実は常に10位台にランクされています。
1990年代までのマレーシアは、世界各国の企業にとって製造拠点でした。しかもアジア通貨危機以降は多くの工場が中国などへ移管されることに。当時を知る人には、「駐在員が望む滞在先」というイメージはあまりないでしょう。
しかし実際には、マレーシアには広大な土地があり、近年高速道路や鉄道などのインフラ整備が進んで、高速インターネット網も多くの場所で利用可能と、様々な面でビジネスにも適した環境が整いつつあります。ジョホール州の広域に及ぶイスカンダル開発計画も進んでいて、ジョホールバル市内のショッピングモールなども大勢の人で賑わっています。政治や国家財政などにリスクがあると見られてきましたが、現政権の運営は比較的安定しており、来年4月からの物品・サービス税の導入など財務体質の改善が図られつつあります。2020年までに先進国入りするという目標の下、多民族国家としての難しさも乗り越えながら積み重ねられてきた努力が、いよいよ成果となって現れ始めているようです。
こうして見るだけでも、マレーシアが持つ可能性は大きく、駐在員が望む滞在先として候補に挙がるのはむしろ当然と言えそうです。シンガポールを拠点とする我々にとっても、今後ますます目が離せない国になるでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.268(2014年11月03日発行)」に掲載されたものです。

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