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2007年12月17日

インドの食事情(社会6)

今回インドの社会・文化の6回目で、インドの食事情について述べてみたいと思います。

 

インド人の主食はというと、小麦を産する西北インドでは小麦粉で作ったナンなどのインドパン、米を産する南インドやベンガル地方では米飯です。

 

インドでは国民の4割程度は肉を食べないベジタリアンです。ベジタリアンは食事は穀物、野菜、豆類が中心で、厳格な人になると肉・魚類以外に卵も食べません。これは国民の8割を占めるヒンドゥー教やジャイナ教では、基本的に殺生が禁止されていることの影響です。先日インド人一行を日本で案内したとき、偉い人の希望ですし屋に行きましたが、メンバーの中のベジタリアンは海苔も食べることができず、ガリをおかずに白ご飯を食べていました。

 

またヒンドゥー教では、三大神の一人であるシバ神が乗る動物である牛は神様の使いとされており、特に牛肉を食べるのは絶対にダメです。マクドナルドが1996年にインドに進出した際には、ビーフは使ってなかったのですが、ヒンズー保守派からは反発を受け、襲撃された事件もありました。しかし現在では都市部若者を中心とした西欧化や中産階級の増大などで人気を得ており、店舗網を拡大させています。マクドナルドでもベジメニューとノンベジメニューがあります。ベジメニューはポテト、レタスやトマトに玉ねぎをはさんだもので、ノンベジメニューにはフィレオフィッシュやチキンをはさんだものなどがあります。

 

ヒンドゥー教徒は牛肉を食べませんが、牛の乳搾りは殺生にならないため牛乳やバターなどの乳製品は食べます。
ただ最近の欧米化された若者の中には、ヒンドゥー教徒の中でも牛肉を食べる人もおり、親世代は眉をひそめています。ちなみにヒンドゥー教と起源を一にする仏教でも殺生は禁止されており、精進料理は殺生をさけるために浸透してきたという経緯があります。

 

次にインドと言えばカレーですので、カレーについてまとめます。
インドのカレーは、一種類の肉や野菜をマサラという香辛料で煮込んだものを言います。マサラとは、クローブやシナモン、ナツメグと言った植物の実、種、葉、根から作ったスパイス(香辛料)で作ったソースで、日本で言うしょうゆやみそにあたるものと考えたらいいでしょう。
インドではどの家やレストランでも、マサラを常時20~30種類はそろえていて、それぞれの目的に応じて調合し、香り付けに、または色、味、辛み付けにというように使い分けて使っています。主材料に様々なマサラが組み合わせられ、香り豊かなインド料理ができ上がります。 カレー以外にも、スープや揚げ物、スナックに至るまで、ほぼ全てのインド料理に共通しているのがマサラを使っているという点です。

 

インドのカレーは北と南では異なり、基本的に南インドの方が辛いです。北インドのカレーは小麦が主食であることからナンで食べ、ガラムマサラなどを多く使い、ナッツ類や生クリームを多用し、こってりとして汁気が少ないことも特徴です。一方南インドではクミンに加え、マスタード、赤唐辛子、黒胡椒などのスパイスで強烈な辛味をつけます。南インドは豆食文化であるため、豆を基調とした野菜スープのような汁気の多いカレーです。これは南インドの主食はインディカ米で、汁気の多いカレーが多いのはこのご飯によくあうように工夫されたためと言われています。ちなみに日本国内に存在するいわゆるほとんどのインド料理店は、北インド料理かその亜流です。しかし、南インド料理の油少なめ、野菜、豆が豊富で、薬膳料理ともいえるヘルシーさが、最近の健康ブームで日本でも人気になりつつあります。

 
またインドのスパイスは料理の味を形作るほか、古代インドの科学「アーユルヴェーダ」に根差していて、人々の健康を保つものとして、漢方薬的にも用いられています。

インドの食事情はとても一回で語れるものではありませんので、次回の社会でさらに示します。
次回はインド史の7回目で、1500年代以降のムガル帝国の時代について示します。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシーauthor

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.112(2007年12月17日発行)」に掲載されたものです。

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