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インドビジネス基礎情報

2006年10月16日

インドの経済構造(経済1)

今回は自由化以降の状況、国際収支、為替や財政の状況などからインドの経済構造の特徴を示していきます。

 

1インドブームの到来

インド経済は91年の自由化以降年平均6%を越える実質GDP成長で拡大しており、特に最近の3年間は7〜8%の成長を達成しています。また2006年度も8.5%の高成長が見込まれています。
経済危機に陥った91年GDPはマイナス成長でしたが経済自由化後の92年度以降は急速な回復を達成しました。自由化の断行により94年からは世界からインド経済の将来性に対する期待が高まり、海外からの投資やインドへの外国企業の進出が進み、7%を越える成長を記録するようになりました。さらにWindows95の発売を契機としたインターネット革命が広がり、在米インド人がこの流れの中で重要な位置を占めたことと、同時に進行したグローバリゼーションと重なったことで、インドのソフトウェア産業を大きく開花させ、94-96年は第一次インドブームとなりました。
その後97年にはアジア危機があり、さらに98年にバジパイ政権が行った核実験が米国や日本の経済制裁につながり、インドへの関心もやや低下しました。しかし2000年問題に対応したソフトウェア開発でインドパワーに再び注目が集まることになり、インドのソフトウェア産業の実力が広く世界に認知されることとなりました。2000年には米クリントン大統領、露プーチン大統領、日本の森総理など要人が相次いでインドを訪れるなど、このIT景気に沸いた2000年ころが第二次インドブームと位置づけられます。
さらに2003年以降、IT業界の業績好調や、台頭する中国とのバランス上からインドの外交上の重要性も高まったこと、及びグローバル・ソーシングも一層加速したことで多国籍企業のインド進出も進み、第三次インドブームとなり、現在に至っています。

 

2国際収支の状況

インドは経済自由化以降も2001年までは、貿易収支も経常収支もずっと大幅な赤字で、それを海外労働者送金などの移転収支でなんとか埋め合わせてきたという状況でした。
貿易構造は輸入の約3割は原油などの鉱物性燃料で原油価格動向が貿易赤字の額に大きく影響する構造となっています。
このような国際収支の状況を、ソフトウェア輸出が大きく変えることになりました。すなわちソフトウェア産業の急速な拡大、輸出の増加により、サービス収支が大きく改善し、今やサービス収支、移転収支の黒字が貿易収支の赤字を上回るようになって、構造的経済収支黒字国になりました。1991年に底をついた外資準備高も債務額を上回る1,300億ドルを超え、かつての対外債務大国インドは、今や純債権国になっています。

3為替動向

通貨ルピーの為替レートは安定しています。インドルピーは1993年から実質的な変動相場に移行していますが、実際には米ドルの動きをにらんで、政府がインディアンルピーの為替レートを管理しています。しかもその管理は、インディアンルピーが米ドルに対して一定のゆるやかな速度で下落するように行われています。
すなわちルピー相場は安定しており、この点でのリスクはあまりないと言えます。

4財政赤字

政府の財政は大幅な赤字となっています。インドの財政赤字は、日本と同様これまで蓄積された債務に対する利払いが2005年度で予算の22%と大きく、これが財政硬直化の原因となっています。また近年では政府がインフラ整備を積極的に進めており、公共工事関連の支出は予算の23%ですが増加傾向にあります。財政赤字の額はGDP比8%にも達しています。歳入をみるとインドの税収は物品税や関税など間接税の比率が高く、法人税、所得税などの直接税が占める割合は29%しかありません。インドは個人所得税を支払っている人はわずか3千万人しかおらず、捕捉率の向上が課題となっています。そのため、消費税に相当する付加価値税を2005年4月に新たに国税に切り替えて導入しました。この付加価値税は12.5%ですが、食料など生活必需品は4%に低減されています。現在は国営企業の民営化などで改善傾向にありますが、政府は財政赤字をGDP比3%まで削減することを目指しています。

 

次回は、ITの2回目で、インドとITの相性について述べます。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシーauthor

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.084(2006年10月16日発行)」に掲載されたものです。

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