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インドビジネス基礎情報

2008年1月28日

インドのエレクトロニクス業界(経済7)

今回はエレクトロニクス業界についてです。
インドのエレクトロニクス市場は、経済自由化前の1990年以前にはラジオ、テレビなどが一部に出回っていただけの活気のない状態が続いていました。しかし1991年の経済自由化以降は、三洋電機から技術供与を受けたBPLなど地場メーカーが中心となって、新しい製品が市場に登場するようになっていきました。そして90年代末以降になると、LG電子、サムスン電子という韓国メーカーがシェアを急速に奪ってきているというのがインド・エレクトロニクス市場の現状です。

 

 

インドにおける家電製品の普及率を2005年時点と2009年の予測値で見ると、カラーテレビがそれぞれ21%から30%に、冷蔵庫が16%から22%に、洗濯機が11%から15%、そしてエアコンが2%から3%に上昇すると見込まれ、家電製品の普及は着実に進んでいます。しかし、洗濯機は水不足というインド特有の事情があり普及が遅れています。またエアコンについては、真夏の気温が45度を超えることもあるインドでは潜在需要は大きいのですが、販売価格が2万ルピー前後と一般家庭には高額であることや、電気料金も高いことから普及がまだ遅れているのが現状です。

 

 

家電市場のメーカー別シェアをみると、カラーテレビ、冷蔵庫、エアコンとも韓国LG電子がシェアトップであり、サムスンがカラーテレビとエアコンで2位、そして冷蔵庫では4位と、韓国勢が圧倒しています。韓国勢がインドに進出したのは、日本勢より遅い95~97年であったにも関わらずここまでの成功を収めた理由としては、主に以下の4点があげられます。

  1. 当初から現地生産を前提とした大規模な投資を行ったこと
  2. 最新の製品をいち早くインドにも投入したこと
  3. 現地子会社への大幅な権限の委譲やインド人幹部の積極的な登用といった現地化の推進
  4. 大量の広告宣伝と、庶民層までターゲットとした低価格戦略

です。このようにまとめると韓国系2社は、本社トップがインドを重点市場と捉えて力を入れたことが、成果となって表れたと言えます。

 

 

韓国系企業がインドでの生産や研究開発を強化してきているように、インドはハードウェア製造の分野でも力をつけてきています。その結果、エレクトロニクス生産の受託製造を行うEMS(電機機器受託製造サービス)企業のインドへの進出も増えてきています。シンガポールに本社を置く大手のフレクトロニクスはバンガロールなどインド5都市でハードウェアの設計から生産まで行っています。他に米国系のソレクトロンや欧州系のエルコテックもインドに進出するなど、世界大手EMS企業はほとんどインドに拠点を持っています。電子機器製造の分野は今後数年にわたって毎年20%以上の成長が見込まれており、ハードウェア製造でのアウトソーシング受託でも、中国と並ぶハブに成長する可能性がでてきています。

 

 

次に携帯電話についてです。ここ数年インドでは携帯電話の加入者が爆発的に増加しています。2006年度末時点では、前年比1.7倍の1億6605万件となっていましたが、昨年8月末時点では2億129万件となり、毎月550万件以上もの新規加入を集めています。インド政府は、2010年までに5億件の加入を実現することを目標としており、達成できるとしています。インドの携帯電話普及率は昨年始めに12%でしたが、これも以後2年で倍増し、4年で3倍になると予測しています。ただインドでは携帯電話の普及は主として都市部に限られており、携帯電話各社は今後、人口の約7割が住む地方の広大な市場の攻略を考えています。
携帯電話機製造では、ノキアが2006年3月にチェンナイに工場を稼動させて以来、過去18カ月間で携帯電話機6000万台を生産したと発表しました。ノキアは、このインド工場から58カ国への輸出を行っており、この工場をグローバルな製造拠点と位置づけています。韓国サムスン電子も昨年よりインドで携帯電話の生産を始めています。

 
携帯電話機のシェアは、ノキアが60%と圧倒的な1位で、サムスン、モトローラが続いています。携帯電話では韓国勢のシェアが伸び悩んでいるのは、低価格機がノキアやモトローラに比べて弱いことがあげられています。

次回はITの7回目で、インドIT産業の地域的状況や課題などについて述べていきます。

文=土肥克彦(有限会社アイジェイシーauthor

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.115(2008年01月28日発行)」に掲載されたものです。

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