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会計・税務相談

2023年11月13日

Q.シンガポールで登記されていない外国会社による商品・サービス税(GST)の課税供給

Q. A社は日本の会社で、シンガポールに支店などはありません。この度、シンガポールに工場があるB社に製品の製造を委託し、その製品をシンガポールの顧客のC社に納品する取引を開始することになりました。商流は、まずB社からA社に販売し、更にA社からC社に販売します。この取引に関し、A社はC社への製品の販売についてGSTを徴収し、内国歳入庁(IRAS)に納税する義務があるでしょうか。

 A. シンガポールで設立登記も支店登記もしていない外国の会社であっても、シンガポールのGSTの対象となる課税売上高が年間100万Sドルを超える場合は、標準税率が適用される課税供給についてGSTを徴収し、IRASに納税する義務が生じます。
 
 ここで言うGSTの対象となる課税供給は、以下のような取引を指します。
 

 
 シンガポールから海外への商品の輸出および国際サービスの供給は、シンガポールの事業者の国際的な競争力を削がないよう、意図的に税率を0%(免税)にしていますが、事業者による課税売上高を計算する上では、商品の輸出および国際サービスの供給も課税供給に含めて考えます。但し、課税売上高の90%超が商品の輸出または国際サービスの供給である事業者は、年間の課税売上高が100万Sドルを超えた場合に、納税義務の免除を申請することが可能です。
 
 上記の例では、B社からA社、およびA社からC社への製品の販売は、何れもシンガポール国内における商品の供給にあたり、標準税率による課税の対象となります。B社がIRASに登録する課税事業者である場合、A社によるB社からの仕入には8%のGSTが課せられます。A社からC社への販売に関しては、A社による全ての課税供給の合計が年間100万Sドルを超える場合、A社は課税事業者としてIRASに登録し、8%のGSTを徴収しなければなりません。
 

Q. A社の課税売上高が年間100万Sドルを超えなければ、GSTの納税義務が免除されるということでしょうか。

 A. その通りですが、A社が免税事業者となった場合、B社からの仕入に課せられるGSTについて仕入税額控除を行うことができず、仕入価格がGSTの分だけ上昇することになります。これを避ける方法として、A社は、課税売上額が年間100万Sドル以下であっても課税事業者としてIRASに任意登録し、C社からGSTを徴収すると同時に、B社に支払ったGSTについて仕入税額控除を申請するという選択肢があります。
 

Q. A社は、シンガポールで法人登記も支店登記もしていませんが、IRASに課税事業者として登録することができるのでしょうか。

 A. 上記の例のように、シンガポールで登記されていない外国会社による取引に関し、シンガポールでGSTの納税義務が生じた場合、A社は、シンガポールの事業者を代理人に選任した上で、自らをGSTの課税事業者として登録することができます。この場合、代理人に選任されたシンガポールの事業者は、A社がGSTの課税事業者として法令を遵守し、正しく申告・納税するよう、責任を負うことになります。
 
 シンガポール国内にグループの関連会社などがある場合には、その会社に代理人としての協力を仰ぐとよいでしょう。そのような会社が見つからず、かつシンガポールでGSTの課税供給者としての登録を免れられない場合は、シンガポールで支店登記することも検討するとよいでしょう。
 

著:Tricor Singapore Pte Ltd 斯波澄子

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