2024年1月19日
Q.雇用主による従業員の雇用所得の申告
目次
Q. シンガポールでは、雇用主は、従業員の雇用所得について、どのような申告が必要になりますか。
A. 雇用主は、毎年3月1日までに、前年1月~12月の従業員の雇用所得に関し、Form IR8Aと称する雇用所得証明書を内国歳入庁(IRAS)に提出しなければなりません。申告の対象となるのは、臨時雇用、海外居住者、取締役なども含めた全ての被雇用者です。但し、前年に雇用を終了し、Form IR21を提出して税務精算を完了した外国人従業員は除外されます。
総従業員数が5名以上の事業所は、自動申告制度(Auto Inclusion System)に登録し、Form IR8AのデータをIRASのシステムにアップロードすることが義務づけられています。提出されたデータは、従業員各個人の所得申告に自動的に表示されます。総従業員数が4名以下の事業所は、Form IR8Aのハードコピーを従業員に手渡す方法が認められています。この場合、従業員は、受け取ったForm IR8Aの記録に基づき、所得申告において雇用所得の金額を自分で入力する必要があります。
Q. Form IR8Aには、どのような所得を申告するのでしょうか。
A. 所得の申告は、以下のような項目別に記載します。
(1)給料・賃金、役職・職務手当、有給休暇・祝日の買取、超過勤務手当
(2)賞与
(3)取締役料
(4)各種手当(交通費手当、交際費手当、その他)
(5)歩合給
(6)シンガポール国内の認可された年金制度からの給付金
(7)一時金(採用一時金、退職一時金、通知期間の買取、整理解雇補償金など)
(8)定年退職給付(一時金、年金など)
(9)雇用主によるシンガポール国外の年金・貯蓄制度への拠出金
(10)雇用主による中央積立基金(CPF)への法定拠出率を超える拠出金
(11)従業員ストックオプション制度またはその他の従業員持株制度による利益
(12)その他の現物給付
このうち、(11)の「従業員ストックオプション制度またはその他の従業員持株制度による利益」がある場合はAppendix 8Bによる申告、(12)の「その他の現物給付」がある場合はAppendix 8Aによる申告が、それぞれ追加で必要になります。
また、(9)の「雇用主によるシンガポール国外の年金・貯蓄制度への拠出金」のうち、本国の政府による社会保障制度に基づき、本国外で就労する従業員に関しても拠出が義務づけられており、拠出金がシンガポールの会社・恒久的施設の費用として損金処理されていない場合は免税とする特例措置がありましたが、この措置は、2024賦課年度(2023年の所得)を最後に廃止されます。
更に、従業員の所得税の全額または一部を雇用主が負担する場合は、雇用主による負担の内容について申告が必要です。これは、雇用主が負担する所得税も従業員の雇用所得の一部となるからです。
Q. Appendix 8Aには、どのような現物給付を申告するのでしょうか。
A. Appendix 8Aに申告すべき現物給付は、以下のような種類に分類されています。
(a)従業員に貸与された住宅
(b)水光熱費、電話、スーツケース、ゴルフ用品、電子機器(タブレット、ラップトップなど)
(c)運転手
(d)家政婦、庭師、管理人
(e)本人または家族のシンガポール国内のホテル滞在
(f)本人または家族の本国への一時帰省旅費
(g)雇用主による金利補助または低利子・無利子の貸付金
(h)従業員または家族を被保険者とする保険の保険料
(i)一時帰省以外の休暇旅費
(j)本人または家族の教育費
(k)余暇・社交を目的とするクラブの入会金、名義書換料および年会費
(l)従業員に市場価値より低い価額で売却された資産(車両などを含む)の利益
(m)雇用主から譲渡された車両
(n)雇用主から貸与された車両および関連費用
(o)その他の現物給付
これらの現物給付のほとんどは、雇用主が負担した費用または従業員が得た利益の実額が課税所得となりますが、(n)の「雇用主から貸与された車両」のように、所定の計算式に基づいて所得金額を計算するものものありますので、注意が必要です。