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2023年4月3日

ASEAN:域内各地で金融引き締め収束の動き ~ ベトナムは2年半ぶりの利下げ

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 金融引き締めを継続中の米国では「利上げ打ち止め」の時期がいつになるかが注目される状況だが、東南アジア諸国連合(ASEAN)では引き締め局面が終わりを迎えつつある流れといえる。今年3月に世界的な金融システム不安が高まったことが大きな要因だが、ここに来てインフレのピークアウト感が出始めていることも背景にあるようだ。同月の動きをみれば、インドネシア中央銀行が2会合連続で政策金利を据え置いたほか、ベトナム中央銀行は想定外の利下げに踏み切った。以下、一連の動きを「亜州ビジネスASEAN」ニュースで振り返ってみる。
 

インドネシア:中銀が政策金利据え置き、2会合連続

 インドネシア中央銀行は16日、定例の金融政策決定会合の結果、政策金利(7日物リバースレポ金利)を5.75%に維持すると発表した。据え置きは2会合連続。昨年8月から6会合連続で利上げしたが、その後は現在の金利水準でインフレ率は次第に目標レンジに落ち着くとみて、2会合連続で金利を据え置いた。
 
 国内ではインフレ率が2022年9月に5.95%のピークに達したが、その後は低下して23年2月には5.24%まで減速。中銀は現在の金利水準が適正で、今年上半期には目標レンジの2.0~4.0%に落ち着くとの見方を示した。
 
 ロイター通信によると、中銀のペリー・ワルジヨ総裁は会見で、米銀行が1週間で3行破綻し、欧州金融大手クレディスイスの経営にも懸念が上がるが、国内の金融システムには直接的な影響はないと説明。ただし、リスク回避で途上国から資金を引き揚げる動きが強まっており、状況を注視するとしている。
 
 中銀は、新型コロナウイルス禍からの経済回復を後押しするため、20~21年に6度の利下げで政策金利を計1.50ポイント下げ、過去最低の金利水準とした。その後1年半にわたり据え置いたが、インフレ圧力を抑制するため、22年8月には3年9ヵ月ぶりとなる利上げに踏み切り、以降は5会合連続で利上げしていた。[「亜州ビジネスASEAN」 3月17日付ニュース]
 


 

 

ベトナム:中銀が2年半ぶり利下げ、景気下支えで

 ベトナム中央銀行は14日、景気を下支えするため主要政策金利を0.5~1.0%引き下げることを決めた。利下げは2020年10月以来、2年半ぶり。昨年は9~10月に2度の利上げを行ったが、その後の世界的な景気後退を受けて金融緩和に転じた。サイゴンタイムズが15日付で伝えた。
 
 基準割引率(ディスカウントレート)を4.5%から3.5%に、銀行間のオーバーナイト金利を7.0%から6.0%に引き下げた。再割引金利(リファイナンスレート)は6.0%に据え置いた。15日から適用した。
 
 中銀はまた、商業銀行が一部産業・企業に対して融資する際の金利上限も引き下げた。農業、農村開発、輸出に従事する企業や、中小企業に対する短期融資の上限金利を5.5%から5.0%に引き下げた。また人民信用金庫とマイクロファイナンス系金融機関が個人向けに行う短期融資の上限金利を6.5%から6.0%に引き下げた。
 
今回の利下げについて中銀は、景気回復を目指す政府と国会の方針に沿ったものと説明。国内外で物価高に見舞われ、早期に収まる気配がない中、タイムリーなかじ取りが必要になるとしている。[「亜州ビジネスASEAN」 3月15日付ニュース]
 


 

 
 こうした動きの背景には、冒頭で触れたように世界的な金融システム不安の高まりやインフレのピークアウト感があるが、ベトナムに関しては、不動産市況の悪化に伴う国内景気の低迷も警戒された可能性が高い。不動産デベロッパー国内2位のノバランドが財務危機に陥るなど(現在、経営の立て直しに向けた大規模増資を計画中)、同市況は昨年から悪化の一途をたどっている。つい先日も、「ホーチミンをはじめとする南部の地価が年初から10~25%下落した」と報じられたばかりだ。
 
 金融緩和の動きが期待できる一方、不動産バブル崩壊による景気の急速な冷え込みには注意を要する。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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