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2023年3月1日

ベトナム:生産拠点から消費市場へ、所得増で小売売上高が急伸中

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 チャイナプラスワンの最有力国として生産拠点の魅力がクローズアップされていたベトナムだが、最近は消費・小売市場としての注目度が高まっている。ベトナム商工省は「国内の小売売上高が2025年までに22年比で約2.5倍に拡大する」と予想。小売売上高の国内総生産(GDP)寄与度について、全体の約6割を占める水準まで上昇するとの見通しを示した。まず、同予想をはじめとする強気の見方を「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておこう。
 

ベトナム:小売売上高、25年までに2.5倍に=商工省

 商工省はこのほど、国内の小売売上高が2025年までに22年比で約2.5倍の3,500億USドルに拡大するとの予想を明らかにした。国内総生産(GDP)への貢献率は59%に達する見通しという。ベトナム・インベストメント・レビューが3日付で伝えた。
 
 専門家らは、所得増加や観光客の回復、これに伴うホテル・輸送業の回復、政府のインフレ抑制策などにより小売サービス業が伸びていると指摘。こうした中で業界内では投資も活発で、タイ流通大手セントラル・グループの小売事業持ち株会社セントラル・リテール(CRC)は22年半ば、向こう5年でベトナムに300億バーツ(約1,180億円)を投資する計画を明らかにしている。イオングループもベトナムでの店舗網拡大を進めている。
 
 22年の小売売上高は1,420億USドルで、前年から21%増加。政府目標を8%上回った。調査会社ベトナム・リポートによると、小売業者の54%が新型コロナウイルス流行前と同等またはそれを超える業績だったとしている。[「亜州ビジネスASEAN」 2月6日付ニュース]
 


 
 小売りをけん引する一角として、最近は大型小売店舗(スーパーマーケット等)の進出が目立つ。ニュースにあるように、タイや日本の大手流通グループによる現地展開が加速する状態だ。
 

 
 これら実店舗の小売規模が拡大するほか、オンライン販売も大きく伸びていく見通しだ。シンガポールのフィンテック企業によれば、ベトナムの電子決済利用者が24年に5,000万人を超えるという。この動きについても、「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておこう。
 

ベトナム:電子決済の利用者、24年には5千万人に

 フィンテック事業を手掛けるシンガポールのロボキャッシュ・グループは、ベトナムの電子決済利用者が2024年に5,000万人を超えると予想している。現在から21%(870万人)増えるとの見方。ベトナムプラスが6日付で伝えた。
 
 現在の利用者数は4,130万人で、過去4年で3.3倍に増加。成人の57%が利用しており、この割合は18年末の14%から跳ね上がっている。ロボキャッシュは、1人が複数アカウントを持つことで、26年にはアカウント数が1億件、30年には1億5,000万件に達するとみている。
 
 一方、調査会社デシジョンラボによると、22年10月末時点で電子決済のシェアは上位3社が80%弱を占める。具体的には「モモ」が45.8%、「ベトテルペイ」が19.5%、「ザロ」が17.5%。ほかに「ショッピーペイ」(14.1%)な3社を加えると6社でシェア99%に達する。[「亜州ビジネスASEAN」 2月9日付ニュース]
 


 
 実店舗・オンラインを問わず、ベトナムの国内消費は右肩上がりの成長が確実視されている。経済成長に伴う所得の急増を背景に、個人消費の伸びが小売市場を底上げする構図だ。 
 

 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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