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2022年11月1日

アセアン自動車業界:各地で新車販売が急増中、コロナ前水準の回復も相次ぐ

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 アフターコロナの動きが多方面で顕在化する中、アセアン各地の新車販売も急ピッチで伸び続けている。今年9月の販売データをみれば、ベトナムが前年同月比で147.2%増の3万3,463台と急成長。これにより1~9月の累計が前年同期比56.9%増の29万6,403台に拡大し、新型コロナ流行前の19年1~9月を約3割も上回った。インドネシアも1~9月の累計が前年同期比20.8%増の75万8,216台に伸びるなど、19年1~9月をわずかながら上回る水準まで回復している。インドネシアと並ぶアセアンの自動車大国であるタイは、1~9月の累計が63万3,687台とコロナ前に届かなかったが(19年1~9月は75万7,674台)、それでも9月の単月で前年同月比15.6%増の7万4,150台と堅調だ。コロナ前を上回ったベトナムとインドネシアの最新販売動向について、以下の【亜州ビジネスASEAN】ニュース2本で確認していただきたい。またベトナム、インドネシア、タイの月次販売データも図表化しておくので、あわせてご参考いただけば幸いだ。
 

ベトナム:9月の新車販売、2.5倍の3.3万台

 ベトナム自動車工業会(VAMA)が11日発表した2022年9月の国内新車販売台数(一部企業除く)は、前年同月比147.2%増の3万3,463台だった。増加は9ヵ月連続。前月比では8.5%増えた。
 
 内訳は乗用車が前年同月比206.8%増の2万5,611台(前月比2.2%増)、商用車が54.3%増の7,539台(同36.7%増)など。国内生産車は135.0%増の1万7,193台(10.9%増)、輸入車は161.5%増の1万6,270台(6.0%増)だった。6~7月は近年で珍しく輸入車が国産車を上回っていたが、8月以降は国産車が多い状況に戻っている。
 
 VAMA会員企業の販売台数は133.9%増の2万8,756台(前月比9.5%増)。ブランド別ではトヨタが198.4%増の8,779台(31.0%増)で最も多く、これに三菱自動車、韓国・起亜が続いた。なおVAMA非加盟の韓国・現代自動車の販売台数は112.8%増の8,680台(59.3%増)で、VAMA首位のトヨタに次ぐ水準だった。
 
■1~9月は6割増、コロナ前も3割上回る
 1~9月の新車販売台数(一部企業除く)は29万6,403台となり、前年同期から56.9%増加した。新型コロナ流行前の19年1~9月を28.7%上回った。
 
 内訳は、乗用車が前年同期比78.4%増の23万1,698台(19年同期比37.3%増)、商用車が10.2%増の6万495台(同5.2%増)など。国内生産車は59.8%増の16万9,958台(24.3%増)、輸入車は53.1%増の12万6,445台(35.1%増)だった。
 
 VAMA加盟企業の販売台数は26万4,951台で55.8%増加。VAMA首位のトヨタは68.5%増の6万4,130台で、これに起亜と三菱自が続いた。なおVAMA非加盟の現代自の販売台数は27.1%増の5万6,320台で、VAMA首位のトヨタに次ぐ水準だった。[【亜州ビジネスASEAN】 10月12日付ニュース]
 

インドネシア:9月の新車販売10万台、4年ぶり高水準

 インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)によると、2022年9月の国内新車販売台数は前年同月比18.9%増の9万9,986台だった。前年同月を上回るのは4ヵ月連続。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ国内経済が回復に向かう中、販売台数は18年11月以来、3年10ヵ月ぶりの高水準となった。完成車の輸出も伸びており、生産台数は月間で最多となる14万4,956台に拡大した。
 
 販売台数は乗用車が前年同月比25.1%増と、前月から伸びが加速。一方、商用車は1.8%増に減速した。ブランド別では首位トヨタが1.8%減の3万3,449台と落ち込んだものの、2位のダイハツが7.1%増の1万8,781台に拡大したほか、3位のホンダが3.9倍の1万3,374台と大きく伸びた。また、年初に現地工場を稼働させた韓国の現代自動車は5,126台で、スズキ、三菱自動車に次ぐ6位だった。
 
 9月の業界全体の生産台数は39.9%増の14万4,956台となり、2ヵ月連続で過去最多を更新した。乗用車が53.5%増とけん引した。一方、商用車は6.3%減と5ヵ月ぶりに前年を割り込んだ。EVの生産は現代自の「アイオニック5」が310台、中国・上汽通用五菱(SGMW)の「エアev」が2,040台。現代自の生産台数はエンジン車も合わせ1万2,230台だった。
 
 9月の完成車の輸出台数は2.2倍の4万8,545台。ダイハツやトヨタ、三菱自の輸出が大きく伸びた。現代自は6,656台で、ベトナム向けが5割超を占めた。
 1~9月は販売台数が前年同期比20.8%増の75万8,216台、生産台数が34.1%増の106万5,525台だった。新型コロナ流行前の19年1~9月との比較では、販売台数がほぼ同水準となる一方、生産台数は11.5%上回り、過去最高ペースで推移している。[【亜州ビジネスASEAN】 10月14日付ニュース]
 


 

 
 足元の販売急増は、コロナ禍に伴う行動制限や半導体の供給不足で前年同期に伸び悩んでいたことが主因だが、コロナ前水準の回復が相次いでいる点を踏まえれば、間違いなく消費マインドが上向いている結果とも言えよう。自動車産業は裾野が広いだけに、この流れが強まればアセアン各地の景気回復を後押しすることになるはずだ。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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