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2022年5月2日

ASEANスマホ市場:域内各地で出荷急回復 ~ 21年は2桁成長が相次ぐ

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 ASEAN域内の2021年・スマートフォン市場(シンガポールを除く主要5ヵ国)に関する米リサーチ大手IDCの集計が出そろい、各地で出荷が大きく伸びていることが明らかになった。コロナ禍が直撃した20年に苦戦を強いられていただけに、その反動で21年は消費が急回復した格好。複数のマイナス要因*に見舞われたフィリピンこそ6%の減少を余儀なくされたものの、タイとベトナム、マレーシア、インドネシアの4ヵ国は軒並み2桁成長を達成した。以下、「亜州ビジネスASEAN」ニュースを転載しつつ、各地の状況を振り返ってみる。

 ※新型コロナに伴う活動制限が長引いたことに加え、世界的な物流遅延による第4四半期の供給不足が響いた。キリスト教国のフィリピンは例年、欧米諸国と同様、クリスマスセールなど第4四半期に最大の商戦が到来する。

 

1.タイ

 まず、最も好調だったタイを見てみる。反動増のほか、消費刺激策が寄与する形で2割超の伸びを記録している。
 

タイ:21年のスマホ出荷21%増、5G端末が好調=IDC

 米調査会社IDCの7日発表によると、2021年のタイのスマートフォン出荷台数は前年比20.9%増の2,090万台だった。前年に新型コロナウイルス流行の影響で低迷した反動があったほか、政府による消費刺激策の実施や第5世代(5G)端末の低価格化が追い風となって市場が拡大。第4四半期には5G端末が出荷全体の3分の1を占め、アジア太平洋地域(日本と中国を除く)ではインド、韓国に次ぐ3番目の規模となった。
 
 5Gは韓国のサムスン電子や中国の小米科技(シャオミ)が手頃な価格の端末を投入した。また、米アップルの新製品発売も出荷増に寄与した。一方、4G端末を中心に供給不足が問題となっており、IDCは問題解消が22年下期以降になるとの見方を示している。
 
 第4四半期のブランド別の市場シェアは、サムスンが20%弱を占めて2四半期連続の首位を確保した。販促活動が奏功し、主力モデルや折りたたみ式端末の販売を伸ばした。ただ、供給不足で市場シェアは5ポイント以上も低下した。2位はシャオミで、供給回復を受けて前四半期の4位から浮上。3位のアップルは新製品効果で市場シェアが15%超まで上昇し、順位を2つ上げた。4位は中国のOPPO(オッポ)、5位は同vivo(ヴィーヴォ)が入った。[「亜州ビジネスASEAN」 3月8日付ニュース]
 

2.ベトナム

 次に、約12%の成長を達成したベトナムは、新型コロナの行動規制が緩和された第4四半期の急増が寄与したことが分かる。
 

ベトナム:21年のスマホ市場、12%増の1,590万台

 米調査会社IDCの1日発表によると、2021年のベトナムのスマートフォン出荷台数は前年比11.9%増の1,590万台だった。新型コロナウイルス対策の規制が緩和された第4四半期には、前四半期比107.3%増、前年同期比31.6%増と大きく伸びた。
 
 21年の出荷台数のうち、多くが第4世代(4G)通信対応モデルだった。21年7月から第2、3世代(2G、3G)モデルの輸入が禁止されたことで弾みが付いた。
 
 ブランド別にみると、韓国のサムスン電子が530万台でトップ。前年比27.1%増で、市場シェアは前年の29.3%から33.3%に拡大した。2〜4位は中国ブランドで、2位はOPPO(オッポ)の280万台。前年比2.3%増と台数を伸ばしたものの、シェアは19.1%から17.5%に縮小した。3位は小米科技(シャオミ)で70.9%増の200万台(シェア12.7%)、4位はvivo(ヴィーヴォ)で29.4%増の190万台(シェア11.7%)だった。5位は米アップルで66.2%増の140万台。シェアを6.0%から8.9%に広げた。
 
 IDCは、22年のベトナムのスマホ出荷台数が東南アジアで最も高い伸びを記録すると予想。2〜3Gモデルの利用者が4〜5Gモデルに買い替えることで需要が高まるとみている。[「亜州ビジネスASEAN」 3月2日付ニュース]
 

3.マレーシア

 約11%の伸びを達成したマレーシアは、タイと同様に政府の支援策が寄与している。
 

マレーシア:21年のスマホ出荷11%増、政府支援が奏功=IDC

 米調査会社IDCの発表によると、2021年のマレーシアのスマートフォン出荷台数は前年比10.6%増の1,200万台だった。新型コロナウイルスの流行で下半期に需給が細ったものの、低所得層の通信アクセスを確保するため政府が打ち出した支援事業が追い風となった。
 
 政府の支援事業は、所得層の下位40%に相当する世帯「B40」が対象。この事業を好機とみて、通信キャリアと組んで販促を活発化させたスマホメーカーがシェアを伸ばしたとしている。
 
 メーカー別のシェアは、韓国のサムスン電子と中国の小米科技(シャオミ)の上位2社で50%近くを占めた。シャオミはマレーシアでさほどプレゼンスが高くなかったが、支援事業で発生した需要を取り込み、足場を固めた。
 
 IDCは、22年の出荷台数を前年から横ばいの1,200万台と予想。ただし高速通信規格「5G」に対応したスマホの割合は21年の28%から36%に増えるとみている。スマホ販売は23年から徐々に増え、26年には約1300万台に達すると予想。同年には約9割が5G対象機種になるとみている。サムスンと小米で50%。[「亜州ビジネスASEAN」 3月31日付ニュース]
 

4.インドネシア

 上半期に約5割の伸びを達成していたインドネシアは、供給不足に陥った下半期にマイナス成長を強いられたものの、通期11%のプラスで着地した。
 

インドネシア:21年のスマホ出荷11%増、下期は落ち込む=IDC

 米調査会社IDCの22日発表によると、2021年のインドネシアのスマートフォン出荷台数は前年比10.9%増の4,090万台だった。前年に新型コロナウイルスの影響で大幅減だったため、反動で上半期に前年同期比で5割近く増加した。ただ、下半期に入ると、製品の供給不足などで減少に転じ、第3四半期は前年同期比12.4%減、第4四半期は12.8%減と落ち込んだ。
 
 IDCは22年の出荷台数を7.6%増の4,400万台と予測。業者が在庫を積み増しているほか、携帯電話サービス大手2社の合併で高速通信規格「5G」のサービスが加速し、需要を喚起すると見込む。
 
 1年のブランド別市場シェアは、中国OPPO(オッポ)が20.8%で首位。低価格帯の販売強化が奏功し、前年の2位から浮上した。出荷台数は3.5%増えた。2位は中国の小米科技(シャオミ)でシェア19.8%。実店舗での販売に力を入れ、出荷台数を34.2%増と大きく伸ばして前年の4位から躍進した。前年首位の中国vivo(ヴィーヴォ)はシェア18.1%の3位。4位には韓国のサムスン電子(シェア17.6%)、5位にはオッポのサブブランドである「リアルミー」(12.2%)が入った。[「亜州ビジネスASEAN」 3月23日付ニュース]
 

5.フィリピン

 冒頭で触れたように、複数のマイナス要因に見舞われたフィリピンは、通年で6%の減少を強いられた。
 

フィリピン:21年のスマホ出荷6%減、活動制限で落ち込む

 調査会社の米IDCによると、2021年のフィリピンのスマートフォン出荷台数は、前年比5.6%減の1,780万台だった。新型コロナウイルス対策の活動制限の影響で低調に推移。世界的な物流遅延による製品不足も足かせとなった。販売が伸びるクリスマスシーズン向けの製品調達が間に合わない業者もおり、第4四半期には前年同期比23.3%減と大きく落ち込んだ。
 
 ブランド別の市場シェアは、トップ5のうち韓国のサムスン電子を除く4ブランドが中国ブランドだった。首位は中国OPPO(オッポ)のサブブランドである「リアルミー」で、シェア22.2%(出荷台数396万台)。これに◆オッポ=14.7%◆中国の伝音科技=13.8%◆サムスン=13.5%◆中国のvivo(ヴィーヴォ)=13.4%…が続いた。伝音科技とサムスンは、出荷台数がそれぞれ45.1%増、27.3%増と拡大し、シェアを大きく伸ばした。
 
 国内では新型コロナ対策の活動制限が徐々に緩和されており、小売店の営業再開が進んでいる。IDCは22年の出荷台数が2桁増になると予測。供給が回復し、21年下半期に不振だった反動が出ると見込む。中国ブランドの低価格品投入により、第5世代(5G)対応端末の需要増にも期待できる。5G端末が出荷全体に占める割合は、21年の12.7%から倍増するとみている。[「亜州ビジネスASEAN」 3月3日付ニュース]
 


 
 以上のように、ASEAN主要5ヵ国のスマホ出荷に関しては、フィリピンを除く4ヵ国が軒並み2桁成長を達成する形となった。最後に、記事中でも触れられていた各国のブランド別シェアを図表化しておく。
 

 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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