アセアン：各国が入国規制の緩和を決定 ～観光客の受け入れ再開へ

　オミクロン株の感染拡大が続いているにもかかわらず、アセアン各国が入国規制を緩和する方向に舵（かじ）を切り始めた。ワクチン接種の進展によって重症者が少ないことに加え、長らく停滞していた社会経済を正常化させる必要に迫られていることが背景にある。以下、各国の動きをまとめてみる。
 
　まず、観光依存度の高いタイの入国規制緩和を「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認してみよう。
 

タイ：隔離免除入国を来月1日再開、全世界対象に

　政府は１月20日、ワクチン接種などを条件として入国者に対する隔離義務を免除する制度「テスト・アンド・ゴー」を2月1日から再開することを決定した。新型コロナウイルス変異株のオミクロン株の流入を防ぐために先月下旬から一時的に停止していたが、滞在初日と5日目のPCR検査などを条件に加え、すべての国・地域を対象に申請の受付を再開する。同日付各紙が伝えた。
 
　南部のリゾート地、プーケットなどで実施している滞在地域を限定する隔離免除制度「サンドボックス」についても、対象地域を拡大することを決めた。来月1日から東部チョンブリ県のパタヤやシラチャー、同トラート県のチャーン島などを対象に含める。
 
　テスト・アンド・ゴーは昨年11月1日、日本など63ヵ国・地域からの入国者を対象に導入した開始から約1ヵ月間で利用者数は12万人超と堅調に推移していたものの、オミクロン株の発生を受けて一時停止に追い込まれていた。[「亜州ビジネスASEAN」　1月23日付ニュース]
 

 
　次に、タイと同様に観光依存度の高いベトナムの動きについても、「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておく。
 

ベトナム：外国人客を全面受け入れ、3月半ばから

　政府は２月16日、「外国人観光客の受け入れを3月15日から全面解禁する」という文化・スポーツ・観光省などからの提案を承認した。新型コロナウイルス変異株のオミクロン株の感染が広がるものの、重症者が少ないことから、予定より3ヵ月前倒しで入国を解禁する。
 
　ブー・ドゥク・ダム副首相が、文化省や財務省、保健省などから受けた提案を承認した。今後は文化省が中心となり、全面解禁に向けた詳細な指針をまとめ、首相に承認を求める。
 
　新型コロナ発生を受け、政府は2020年3月から外国人観光客の入国を禁止。事態改善を受けて昨年11月に制限を緩和したが、渡航元は限られ、ツアーへの参加を必須にするなどの規則を設けていた。徐々に入国規制の緩和を進め、6月に全面解禁する予定だったが、3ヵ月早める格好となる。
 
　文化省の提案時点での報道によると、入国には新型コロナワクチンを2回接種済みまたは感染後に完全回復した証明を課すのみで、現在必須としている観光ツアーへの参加は任意とする意向。到着後に新型コロナ検査を行い、陰性ならば即時入国できるようにするとしている。またビザ（査証）免除協定を結ぶ国・地域からは新型コロナ流行前と同様、ビザなしで入国できるよう戻すことも提案していた。[「亜州ビジネスASEAN」　2月17日付ニュース]
 

 
　他のアセアン地域でも、規制緩和の動きが相次ぐ状況だ。たとえばフィリピンは、「ノービザ対象国、ワクチン接種済み、PCR検査陰性」を条件に、隔離措置なしの入国を外国人に開放。２月10日から、外国人観光客を2年ぶりに迎え入れた。またインドネシアも、バリ島で観光客の受け入れを再開。2月3日に2年ぶりとなる国際旅客便の受け入れに踏み切ったほか（成田発）、11日には5日間の隔離措置が免除される28軒のホテル名を発表した。
 
　アセアン各国が規制緩和に踏み切る背景には、前述したように国内経済を立て直す必要に迫られていることがある。アセアン地域の観光産業は、コロナ流行前の2019年に域内総生産（GDP）の約12％を占め、特に同比率が20％と高いタイでは、観光産業の低迷が経済全体に深刻な影響を及ぼしていた。
 
　依然としてオミクロン株の感染拡大が続く中、歓迎一色というムードではないものの、入国規制の緩和は景気回復に向けた重要な一歩であることは疑いない。コロナが収束し、日本とアセアンを自由に往来できるようになる日が待ち遠しい。