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2021年7月5日

マレーシア半導体メーカー:コロナ活動制限令の影響軽微か ~重要産業として優遇観測

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 マレーシアで6月1日~14日の期間、新型コロナの感染再拡大に向けた全土規模のロックダウン(都市封鎖)が再度実施されたが、半導体メーカー各社の操業に関してはマイナス影響が軽微にとどまっている模様だ。内外メディアの報道によると、同国半導体産業の重要性が考慮される中、表向きの規制と異なり、なるべく操業に支障が出ないような運用が実質的に認められているという。
 
 この動きについては、以下の亜州ビジネスASEANニュースで確認いただきたい。
 

マレーシア:半導体業界、都市封鎖でも正常操業を維持か

 新型コロナウイルスの感染抑制策として、6月1日から改めて全土にロックダウン(都市封鎖)が発令されたが、台湾の市場調査会社、集邦科技(トレンドフォース)によると、半導体業界では多くの企業が正常な操業を保っているという。7日付香港・FX 財経報社などが報じた。
 
 都市封鎖令の下では「電気・電子機器」は通常の6 割の人員での操業が求められているが、世界的な供給不足に解消の見通しが立たない中、半導体業界に対しては例外的に緩やかな措置がとられているもようだ。
 
 首都圏のセランゴール州ペタリンジャヤに工場を置く半導体用シリコンウエハーの台湾最大手、環球晶円(グローバルウェーハズ、GWC)は「生産工程は通常どおりで、基本的に問題はない」と説明した。人員の出勤制限があることは認めつつ、「出荷スケジュールがやや遅れるだけで、影響を最低限に抑えられる」と指摘した。
 
 トレンドフォースによると、米インテル、同テキサス・インスツルメンツ、独インフィニオン・テクノロジーズ、台湾の日月光投資控股(ASE)、中国の天水華天科技など海外の大手半導体メーカーも、生産面で制限を受けていない。マレーシアは半導体後工程のパッケージング・テスティング(封止・検査)で世界市場の13%を占める重要拠点だ。
 
 一方、半導体と並ぶ電子業界の重要分野の受動部品では、太陽誘電がサラワク州クチンの積層セラミックコンデンサー(MLCC)工場の休止期間を14日まで延長するなど、生産に影響が出ている。出荷の遅延が下半期の受動部品市場の需給に影響を及ぼす可能性もある。[亜州ビジネスASEAN 2021年6月8日付ニュース]
 


 
 「半導体メーカー優遇」の観測が流れた背景には、マレーシア経済に占める電子産業の重要性がある。半導体後工程のパッケージング・テスティング(封止・検査)が主体のマレーシアの半導体生産規模は2020年に267億個まで膨らみ、15年比で約2.3倍に拡大するなど急成長中。海外電子メーカーの誘致も進み、大手半導体メーカーの進出数は約50社に達した。今やマレーシアの最大輸出品目が電気・電子(製品・部品)となり、20年には輸出全体の4割に迫る勢いだ。
 

 
 こうした状況の下、マレーシア半導体産業の生産が停滞した場合は、単に国内経済の痛手となるだけではなく、半導体不足の現状で世界のサプライチェーンにも多大なマイナスをもたらすことになる。半導体の封止・検査では、同国が世界シェアの13%を占める状態だ。
 
 国内外へ与えるマイナス影響が大きいだけに、マレーシアの半導体業界は早くから操業停滞につながる活動制限に懸念を示していた(以下の亜州ビジネスASEANニュース参照)。
 

マレーシア:半導体業界が活動制限に懸念、「供給不足に悪影響」

 マレーシア政府は5月12日、新型コロナウイルスの感染抑制対策として、改めて全国に活動制限令(MCO)を発令した。物流に一定の制限が見込まれ、半導体の世界的な供給不足にさらなる悪影響を与えるとの懸念が業界関係者から出ている。中国・国際電子商情が13日報じた。
 
 MCOでは州をまたいだ移動が禁止されるが、経済活動は除外対象となる。しかし、企業は従業員を在宅で勤務させることを求められ、出勤が認められるのは最大で30%の管理職者にとどまる。トラックやビジネス用車両の乗員も制限されており、製品の輸出入や通関の速度への影響が懸念される。
 
 マレーシアは世界の半導体産業において、パッケージング・テスティング(封止・検査)の13%を一国で担う。業界企業は50社に上り、世界的大手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、NXPセミコンダクターズ、日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング、ASEH)、インフィニオン・テクノロジーズ、STマイクロエレクトロニクス、インテル、ルネサス・エレクトロニクスなどが封止・検査または製造工場を置いている。
 
 マレーシアは受動部品の重要生産拠点でもある。レジスタの華新科技(ウォルシン・テクノロジー)、旺詮(ラレク)、インダクター・積層セラミックコンデンサー(MLCC)の村田製作所、アルミ電解コンデンサーのニチコン、日本ケミコン、固体電解コンデンサーのパナソニックなどが工場を設置している。昨年3月のMCOでは、これら受動部品メーカーが2週間の操業停止を求められ、関連業界に比較的大きな影響が出た。[亜州ビジネスASEAN 2021年5月16日付ニュース]
 


 
 こうした懸念の声が強まったこともあり、前述したように現時点の操業状況は思ったほど停滞していないという。やはり、直接・間接の配慮がなされている様子だ。いずれにせよ、昨年から続くコロナ禍は、マレーシア半導体産業の存在感・重要性を改めて国内外に示す結果になったと言えよう。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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