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2021年6月4日

ベトナム株式市場:アセアン域内でパフォーマンス突出 ~指数は史上最高値を更新中~

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 経済の安定を支えに、ベトナム株式市場の好調さが目立っている。アセアン域内で最も良いパフォーマンスを示した昨年に続き*、今年の株価もほぼ右肩上がりで推移する状態。本稿執筆中の5月21日には、主要指標のVN指数が1,283.93ポイントと終値ベースの史上最高値を更新した。
 
 ※タイ、フィリピン、シンガポールが軒並み8%超の下げを強いられたのに対し、ベトナムは14%超の上昇を達成するなど出色の数字。
 

 
 昨年から続く相場の好調は、前述したように経済の安定によるところが大きい。〇米中対立の激化で、海外メーカーが中国からベトナムへの生産拠点シフトを進めていること、〇新型コロナの抑制に関し、アセアンの「優等生」とされる成功を収めたこと――などを受けて、昨年のGDPは2.9%のプラス成長を達成した。他のアセアン主要国が軒並みマイナスに落ち込む中にあって、独りベトナムの健闘ぶりが目立つ構図だ。
 

 
 足元の株価上昇は、個人投資家の参入が急増していることも一因だ。今年3月から証券口座のオンライン開設が可能になる中、4月の口座開設数は前年同月の3倍に膨らんでいる(以下のニュース[亜州ビジネスASEAN]参照)。
 

ベトナム:個人の証券口座開設が急増、4月は1年前の3倍

 株式市場が活況な中、個人による証券口座の開設が増えている。ベトナム証券保管振替機構(VSD)によると、4月の口座開設数は前年同月比3倍の11万口近くに上った。VNエクスプレスが10日付で伝えた。
 
 口座開設数は3月から2.6%減少したものの、2ヵ月連続で10万口を超えた。証券口座数は4月末時点で310万口を超えており、このうち機関投資家の口座が1万1,700口、残りは個人口座となっている。
 
 HSBCはリポートで、国内株式市場は活況で、売買代金がシンガポール市場に迫っていると指摘。既にマレーシアやインドネシアを上回ったとしている。
 
 売買代金は4月に1日平均22兆5,000億ドン(約1,060億円)となり、前月から17%増加。先行き見通しが上向いて株式市場に向かう資金が増えたほか、取引所が売買システムの能力を拡充したことも背景にある。
 
 ホーチミン証券取引所(HOSE)では年初に売買代金が1日平均14兆〜15兆ドンに増えた際、システムの不具合が発生したが、システム改善によって4月12日からは20兆ドンを超えても安定稼働している。
 
 HOSEの全銘柄から算出されるベトナムVN指数は5月10日時点で1,259となり、史上最高値の水準にある。新型コロナウイルス流行で20年3月末には約3年ぶりに700を下回ったが、その後は急上昇している。[亜州ビジネスASEAN 2021年5月11日付ニュース]
 


 
 活況に沸くベトナム株式市場は、時価総額が15年から20年までの5年間で3.3倍に膨らみ(20年末時点で4,080兆7,570億ドン)、売買代金が5.8倍に拡大した。売買代金はシンガポールと同水準になり、すでにマレーシアやインドネシアを大きく上回った。海外機関投資家にとっても、もはや無視できない存在に成長したといえる。
 
 日本の証券業界では、今のところベトナムの個別株を取り次ぐ動きが表面化しているわけではないが、「アセアンの成長エリアに投資したい」というニーズが高まる中で、個人投資家によるベトナム株の売買が一般化される日も遠くないだろう。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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