2021年8月3日
ベトナム自動車業界:韓国メーカーの勢い止まらず ~現代が販売台数トップ独走中~
大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。
昨年ベトナム市場の販売台数で初めてトヨタを逆転した韓国・現代自動車は、今年上半期も現地販売のトップシェアを維持している。現代の優位が一段と鮮明化するなか、日本車の牙城だった東南アジア市場の一角が崩された格好だ。現代は今後、ベトナムの生産ラインを大幅に拡充するほか、インドネシアでアセアン域内のEV生産拠点を建設する計画だ。
まず、昨年(2020年)の販売実績を確認しておく。現代とベトナム資本の合弁企業、現代タインコンは同年に8万1,368台を販売。2位のトヨタを1万台以上も突き放し、堂々の首位に躍り出た。
これにより現代タインコンの現地シェアは20%に伸び、トヨタの17%に3ポイントの差をつけた。
この流れは、今年に入ってからも止まらない。直近(6月)の月次販売データをみれば、現代タインコンが5558台とトヨタの5127台を上回った。前年を約8%下回ったとはいえ、依然として首位の座をキープしている。詳細については、以下の亜州ビジネスASEANニュースでご確認いただいきたい。
ベトナム:現代自の6月販売は5,558台、トップシェアを維持
地場タインコン・グループと韓国・現代自動車の合弁会社である現代タインコンは12日、2021年6月の販売台数が5,558台だったと発表した。前月から8.2%減少したものの、トヨタを上回り首位をキープしている。
現代タインコンはベトナム自動車工業会(VAMA)非加盟。そのためVAMAが月次で発表する販売統計には含まれないが、同社の発表に基づくと、6月はVAMA首位であるトヨタの5,127台を上回って国内市場トップだった。販売台数の99.5%に当たる5,529台は現地生産の完全ノックダウン車(CKD)で、残りの29台は輸入完成車(CBU)だった。
モデル別にみると、小型車「アクセント」が1,371台で最多。ただ前月から15.4%減少した。これにスポーツ多目的車(SUV)「サンタフェ」が1.9%増の1,313台、ハッチバック「グランドi10」が3.1%増の983台で続いた。
上半期の販売台数は3万4,035台で、VAMA首位のトヨタ(2万9,239台)を上回った。販売台数の99.4%に当たる3万3,833台は国内生産車で、残りの202台は輸入車だった。モデル別では、アクセントが9,949台で最多となり、これにグランドi10が6,347台で続いた。
現代タインコンは生産能力を強化する方針で、20年9月下旬には北部ニンビン省で第2工場の建設に着手。第2期が完成する25年には、年産能力を現在の7万台から17万台に引き上げる。[亜州ビジネスASEAN 7月13日付ニュース]
韓国メーカーがベトナムでシェアを伸ばしている背景には、日本車に比べて価格が安い点があるが、現地のニーズにあわせたカスタマイズ戦略が奏功していることもある。現代や起亜の現地モデルについて、ある市場関係者は「同等クラスで比較した場合、各種オプションを備えたカスタマイズ車種を安く販売している点で日本車よりも優位」と分析した。
ところで、日系メーカーの脅威は現代や起亜だけではない。ここに来て、地場ビングループの躍進が目立ち始めているのだ。同社の6月販売データについては、以下の亜州ビジネスASEANニュースでご確認いただいきたい。
ベトナム:国産車ビンファストの6月販売、前月比23%増
国産ブランド車メーカーのビンファストは12日、2021年6月の新車販売台数が前月比23.2%増の3,517台だったと発表した。新型コロナウイルス感染症が再流行する中でも、4ヵ月連続で販売を伸ばしている。
同社はベトナム自動車工業会(VAMA)非加盟。そのためVAMAが発表する販売ランキングに入っていないが、VAMAの発表に照らし合わせると、VAMA首位のトヨタ(5,127台)に次ぐ多さだった。なお全体ではVAMA非加盟の現代自動車が5,558台で首位に立っている。
ビンファストの車種別販売は、廉価モデルのハッチバック「ファディル」が2,552台(前月比36.6%増)と過半を占めた。高級セダン「LuxA2.0」は711台(同13.4%増)、スポーツ多目的車(SUV)「LuxSA2.0」は254台(52.1%減)だった。
上半期の販売台数は1万5,938台。全体首位の現代自(3万4,035台)、VAMA首位のトヨタ(2万9,239台)、同2位の起亜(2万1,556台)に次ぐ多さだった。
ビンファストはコングロマリット(複合企業)大手ビングループ傘下で、19年半ばに自動車生産を開始した。自社工場を北部ハイフォン市で操業し、自動車の年産能力は25万台。ほかにも電動バイクを25万台生産できる。21年1月には電気自動車(EV)3モデルを発表。21年から22年にかけて国内外で発売する予定で、今月12日には欧米5カ国に支社を設立したと発表した。[亜州ビジネスASEAN 7月14日付ニュース]
冒頭で触れたように、現代はベトナムの生産ライン大幅拡充を決定したほか、インドネシアでもEV生産ハブの建設に取り組む状態。韓国メーカーがアセアン展開を加速させる中にあって、このところ日系メーカーの出遅れ感は否めない。中長期戦略のカギは、やはりEV展開になると思われる。高い技術を持つ日系メーカーには是非、この分野で巻き返しを図ってもらいたい。
亜州ビジネスASEAN