シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPアセアン繊維業界:ミャンマー政変で周辺諸国に生産シフトの動き ~...

亜州ウォッチ!

2021年4月12日

アセアン繊維業界:ミャンマー政変で周辺諸国に生産シフトの動き ~ベトナム、フィリピンなどへの移転加速か~

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 ミャンマー国軍のクーデターを受けて各国政府・機関の対ミャンマー制裁が表面化する中、民間企業の間でも新規投資の抑制や生産拠点の移転を強いられるケースが目立ってきた。これにより、移転先として周辺アセアン諸国が「漁夫の利」を得る構図。特にミャンマーの主要産業の一つである繊維産業では、その動きが最も顕在化しつつある状況だ。
 

賃金と技術でベトナム、フィリピンの注目度アップ

 地理的に近いのは隣国のタイだが、こちらは所得水準が相対的に高いために必ずしも有利とはいえず、労働集約型である繊維産業の移転先として現実味があるのはバングラディシュ、カンボジア、ベトナム、フィリピンあたりと考えられよう。
 
 ■各国の1人当たりGDP

 国名   19年 
 タイ   7,807 
 フィリピン   3,512 
 ベトナム   3,416 
 バングラディシュ   1,816 
 カンボジア   1,620 
 ミャンマー   1,299 

(IMFの資料を基に亜州リサーチ作成)
 
 このうちベトナムとフィリピンは、バングラディシュやカンボジアと賃金コストの比較では優位性がないものの、外資企業の受け入れ実績や工業技術レベルの相対的な高さが魅力だ。実際、フィリピンの業界団体は早くも「ミャンマーに生産を委託していた外資メーカーがここに来て、発注先をフィリピンに変更しはじめている」と現状を説明。こうした「転注」について、2021年だけで総額5億ドルに膨らむとの見方を示した。
 
 以下、この動きをまとめた「亜州ビジネスASEAN」での記事を転載する。 
 

フィリピン:縫製品の転注5億ドルも、ミャンマー政変効果

 フィリピン海外仕入れ業者連盟(FOBAP)は、ミャンマーで政変が起き国内情勢が不安定になったことを受けて、縫製品のフィリピンへの転注が今年5億ドルに上ると見込んでいる。新型コロナウイルスの流行によって打撃を受けた業界に恩恵がもたらされる見通しだ。1日付マニラブレティンなどが報じた。
 
 既に、欧州のファストファッション業者ゼーマンや、米ウォルマートなどは生産委託先をミャンマーから他のアジア諸国に移転しており、フィリピン業界も子ども用プレイウェアや男性用運動着など約2億ドル分を受注した。FOBAPによると、受注は今後3〜4カ月間で倍増し、2021年に同団体が関係する縫製品と耐久消費財の輸出額は17億〜20億ドルに達すると予想している。
 
 FOBAPのロバート・ヤング会長は、ミャンマーからの「転注」によって、マニラ首都圏とセブ島で1万〜2万人の雇用創出が期待できると語った。[亜州ビジネスASEAN 2021年2月1日付ニュース]
 


 
 一連の動きは、言うまでもなく、ミャンマー経済にとって大きな痛手となる。これまで順調に伸び続けていた繊維・アパレル製品の輸出は、巨額の外貨収入を生み出していたためだ。2019年の出荷総額(世界全体)は、前年比57.6%増の50億5917万ドル(約5500億円)に膨らんでいた。
 

 
 一方で周辺アセアン諸国の繊維産業にとって、今回のミャンマー政変が外資メーカーの受注を一気に取り込む千載一遇のチャンスになると言えよう。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPアセアン繊維業界:ミャンマー政変で周辺諸国に生産シフトの動き ~...