2021年2月12日
マネジメントするにはオフィスに来るべき?
会社によって、もしくは人によっては、在宅勤務(以後、リモートワーク)に対する反応は、大きく異なっています。新型コロナウイルスによってリモートワークを余儀なくされた際に、これからもリモートワーク前提で業務を進めていくようにマネジメントの仕組みややり方、マインドセットを変えた会社と、できればオフィスに出社して業務をする方が望ましいので、出社できるようになったら出社する前提で、とりあえず今を凌ぐように考えた会社とで、生産性や社員のエンゲージメントは大きく変化してきています。
出社派 VS リモート派
今でも、マネジャーや経営者の立場の人たちの間でも、「オフィスに出社しないと、生産性は上がらない。うまくマネジメントするには全員出社が一番望ましい」というマネジャーと、「リモートでも、業務を”見える化”したり、感情の共有をするような1on1の機会を作っているので、リモートでもうまくマネジメントできている」というマネジャーに分かれています。
特に摩擦が起きやすいのは、「オフィスに出てこい」という上司と、家族に新型コロナに感染すると死に至るリスクが高い高齢者や、妊婦などがいて、新型コロナの感染リスクを極力減らしたい社員との関係性です。この場合、上司側に社員が感じている心配やリスクを理解しようとするスタンスがないと、関係性自体が壊れてしまう可能性が高まります。
また、働く側としては、「リモートワークの方が集中できて、通勤時間もないので時間を効率的に使えて生産性が上がる。それに新型コロナの感染リスクもないのでリモートワークが最高」という社員や「オフィスに行くと感じる煩わしい人間関係を感じなくていいから気楽」という社員と、「リモートワークだと、気楽に同僚と話したり、悩んだ時に相談に乗ってもらったり、チームワークが感じられずに不安。自宅には子どももいるので、集中できない」という社員に分かれています。
ある程度仕事ができるベテラン社員にとっては、リモートワークは快適でしょうし、右も左もわからず、社内の人間関係もできていない新人は、リモートワークでは途方に暮れてしまうでしょう。
出社とリモートの上手な使い分け
新型コロナは、初期の武漢型だけではなく、ヨーロッパ型や変異型のイギリス・アフリカ型なども出てきているといいます。これから、ワクチン開発との競争が長期的に続くことが想定されます。
そのような時代では、個人で集中する時はリモートワークで、気軽に相談をしたり、人間関係を構築したり、チームビルディングしたり、あるいは新人のOJTを行う時や、組織の一体感を持ちたい時にはオフィスワークなどのように、オフィスワークとリモートワークの上手な使い分けが重要になってくると感じます。「どちらかでないとダメ」という思考ではなく、目的と状況に応じて、適切に使い分けができるといいと思います。
ただ、リモートワークを行う際に気をつけないといけないのは、社員一人ひとりがセルフマネジメントできることと、エンゲージメントを高めておくこと、目標や業務プロセスの見える化が重要になります。社内SNSなどのコミュニケーションツールを整備することも必須でしょう。
そもそも、オフィスワークとリモートワークは前提が全く異なるので、オフィスワークと同じやり方でリモートワークをしようとするには無理があります。
リモートワークを成功させるには
リモートワークの導入にあたって、下記のような方策を打った会社は概して、今うまくいっているようです。
・社内SNSシステムの導入
・リモートでアクセスできるファイル管理システムの導入
・スケジュールの見える化ツールを導入
・タスクマネジメントツールを導入
・成果マネジメントの仕組みを導入
・成果評価主体に人事評価制度を変更
・オンライン朝会や夕会を開始
・上司と部下が、気楽に話せる 1on1ミーティングを導入
・定期的なチームミーティング
・オンラインでも雑談などができるオンラインランチ会などを導入
・日報を開始
特に若い世代は、「どのように働けるか」を重視する傾向があります。自分の望む働き方ができない会社からはすぐに辞めてしまう傾向があります。
オフィスワークとリモートワーク、どちらかしかダメというのではなく、目的に応じて手段を使い分ける柔軟性が、これからのマネジメントには重要なのではないでしょうか?
森田 英一(もりた えいいち)
beyond global グループ President & CEO
大阪大学大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて人・組織のコンサルティングに従事。その後シェイク社、beyond global社を創業。日系企業のグローバル化支援事業を手掛ける。社員の主体性やリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発ファシリテーションに定評がある。日本全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。主な著作「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(PHP新書)など。日経スペシャル「ガイアの夜明け」「とくダネ!」などメディア出演多数。シンガポール在住。シンガポール在住。
人と組織の可能性を拓く beyond global グループ(シンガポール・タイ・日本)
グローバルリーダーシップ研究所
Email: info@beyond-g.com