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ビジネスインタビュー

2021年1月22日

【ドコモが仕掛ける野心的な新料金プランahamo】そのサービス内容と世界との違いを探る

 2021年3月からNTTドコモ(以下ドコモ)による画期的な携帯料金プランのサービスが開始されます。そのサービス名は「ahamo(アハモ)」。2020年末にそのサービス内容が発表されると、多くのスマホユーザーがその料金の低さに驚かされました。月額料金は2,980円(税別)、月間利用可能通信容量が20GB、国内音声通話は5分まで無料で月額1,000円(税別)のかけ放題オプションも用意されています。
 
 ユーザーとしては諸手をあげて喜ぶプランではありますが、疑問点がないわけではありません。また、総務省が公開した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」から「引き下げる必要がある」とも政府から評価された日本の携帯料金が、本当に海外に比べて高いのか?など、NTTドコモアジア President & CEOの村山啓二郎さんに「ahamo(アハモ)」についての疑問を伺い、そのサービスの狙いと携帯料金の未来を探りました。
 

 

新料金ahamoの内容とは?

ー昨年発表された新料金プラン「ahamo(アハモ)」は、どのようなサービスなのでしょうか?
 
 「ahamo(アハモ)」は、ニューノーマル時代(従来になかった生活様式が生み出される時代の転換期)を切り開いていくデジタルネイティブ世代層にフィットするプランになります。月間利用可能データ容量20GBを月額2,980円(税抜き)でご利用いただける新しい料金プランで、3月からの開始予定です。私どもドコモだけにかかわらず、携帯の料金はさまざまなプランが用意されていますよね。そういったわかりにくさをなくして、プランの内容をしっかりと納得してご契約をいただくことを目指したプランになっています。わかりにくさをなくすという意味では、契約事務手数料やモバイルナンバーポータビリティ(移転先でもそれまでの番号をそのまま使用できる)などの転出にかかる手数料や、細かく用意されている割引の条件を極力なくし、シンプルな形の料金プランになっているのも特徴のひとつです。
 

ahamo基本データ

 月額料金   2,980円(税抜)
別途ユニバーサルサービス料 
 月額利用可能データ容量   20GB 
 利用可能データ容量超過後速度   送受信時最大1Mbps 
 音声通話   1回あたり5分以内の国内通話無料
「SMS(1通あたり3円)」、(0570)(0180)などの他社接続サービス、
(188)の特殊番号、番号案内、衛星電話などへの発信は対象外
5分をこえる国内通話は20円/30秒 
 ネットワーク   ドコモの4G/5Gネットワーク 

 

オプション

 利用可能データ容量の追加   1GBあたり500円(税抜)で利用可能データ容量の追加が可能 
 かけ放題オプション   月額1,000円(税抜)で国内通話無料(「SMS」、「0570」「0180」などの他社接続サービス、
「188」の特殊番号、番号案内、衛星電話などへの発信は、別途料金) 

 参照:ドコモ報道発表資料 2020年12月3日「新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表」
 
 次にahamoは、ドコモショップなどのリアル店舗ではなくて、オンラインのみで受付けになっていることも特徴的です。新規ご契約のお手続きやデータの利用料、料金の確認などの各種お手続きを含め、専用のウェブサイトだけでの受付です。操作方法やサービスの内容などのご不明な点についてもウェブサイトで簡単に調べることが可能で、チャットでのサポートにも対応しています。
 
 そして、サービスの細かい内容になるのですが、データ容量は通常20GBまでですが、20GBを超過したあとでも最大1Mbpsの通信速度でご利用いただけます。さらに20GBのデータ容量は海外82カ国の地域では追加料金なしでご利用いただけます。ご出張やご旅行で別の国に行くときにも面倒な手続きをすることなくそのままインターネットをご使用いただけます。また国内通話は、5分間までの国内通話ならば何度でも無料です。ahamo発表当日にもご質問いただいたのですが、使用するネットワークはドコモの高品質なネットワークです。既存の4Gと新しく始まった5Gネットワークにも対応していますので、ドコモの今現在一番早い5Gネットワークもご体験いただけます。
 
ーシンプルなプランということですが、現状の割引プランやサービスで使えなくなるものはありますか?
 
 いわゆるみんなドコモ割のような割引サービスの利用やキャリアメール「〇〇@docomo.ne.jp」が対象外となります。ちなみに、料金のお支払いに準じてdポイントが貯まるなどのdポイント会員様であるという部分については変わりありません。また、ahamoはファミリー割引の対象回線です。
 
ー契約の対応をオンラインのみに限定したのはなぜでしょうか?
 
 リアル店舗にもよさがあります。ですが「人と接触せずにいつでも自分の好きな時間に手続きが完了する」というスタイルを望まれるのが、デジタルネイティブ世代のユーザーです。そういったニーズとお客様の利便性の向上にプラスして、「既存の料金プランとの差異化」や「競争力のある料金プランの実現」という観点での”より効率的なお手続き”ということでオンラインに特化して提供することになりました。だからこそ、アプリやウェブサイト上でも直感的にわかりやすいシンプルなデザイン、導線作りに勤めていきたいと思っております。
 

世界・シンガポールにおけるahamoの位置

ー海外82カ国の地域で追加の料金の必要がなく利用できるとのことですが、いわゆる「国際ローミング」はわかりにくいところがあります。額面だけみていると海外での利用も日本の契約だけで事足りるように感じます。
 
 海外ローミングは、日本の契約内容をそのままご利用いただけるものですが、データ容量のご使用のみになります。シンガポール国内での通話などを考慮していくと、若干プランを超えた料金がかかってくる可能性もあると思います。ですので、長期的に滞在される場合は現地でご契約をいただいた方がいい場合もあるかもしれないですね。
 

ahamo(20GBの月間データ容量内は追加料金なし)を利用できる国と地域

 アイルランド   サンマリノ   フランス 
 アゾレス諸島   シンガポール   ブルガリア 
 アメリカ   スイス   ブルネイ 
 アラスカ   スウェーデン   ベトナム 
 アンドラ   スペイン   ペルー 
 イギリス   スペイン領北アフリカ   ベルギー 
 イスラエル   スロバキア   ポーランド 
 イタリア・バチカン   タイ   ポルトガル 
 インド   台湾   香港 
 インドネシア   チェコ   マカオ 
 エクアドル   中国   マディラ諸島 
 エジプト   チリ   マレーシア 
 エストニア   デンマーク   南アフリカ 
 オーストラリア   ドイツ   ミャンマー 
 オーストリア   トルコ   メキシコ 
 オマーン   ナウル   モナコ 
 オランダ   ニュージーランド   モロッコ 
 カタール   ノルウェー   ヨルダン 
 カナダ   米領バージン諸島   ラオス 
 カナリア諸島   バチカン   ラトビア 
 韓国   アメリカ(ハワイ)   リトアニア 
 カンボジア   ハンガリー   リヒテンシュタイン 
 キプロス   バングラデシュ   ルーマニア 
 ギリシャ   フィジー   ルクセンブルク 
 グアム   フィリピン   レソト 
 クロアチア   フィンランド   ロシア 
 サイパン   プエルトリコ 
 サウジアラビア   ブラジル 

 
ーシンガポールの大手キャリアの料金(SingtelやStarHub、M1など)の状況(参考:せかいじゅうライフ)とahamoの水準との比較するとどのようになりますか?
 
 条件によっては、高い・安いという部分が出てくると思います。ですが、日本で言われているように「すべてにおいて日本が著しく高い」のかといえば、そこはまだ若干誤解があるのかなと思います。諸外国の料金と比較しても十分な料金というものをahamoで提示できたのではないでしょうか。
 
ー海外に赴任する場合、どのような契約をしている方が多いのでしょう?
 
 傾向として具体的なデータはないのですが、月額約500円で携帯の番号を据え置きして、日本にお戻りになった場合に同じ番号で再開できるサービス(番号保管サービス)を利用する方や、契約をそのまま残してして赴任される方も多いのではないかと思います。というのも、一時帰国等で日本に帰ってきた際に契約を再開することは面倒だからだと思います。もちろん、日本の契約を解除されてからシンガポールへ来られる方もいらっしゃると思いますので、そこはご判断していただければと思います。
 

ahamoが生み出された経緯とこれからの携帯料金

ーとても魅力的なプランですが、ahamoが生み出されるきっかけはあったのですか?
 
 2020年、私たちは新型コロナウイルスによって苦しめられました。シンガポールでもそうですが、日本でもリモート型社会への移行が加速し、今後さらに加速していくのだろうと思います。人との接触を減らしながら効率的なコミュニケーションを図る時代になり、購買行動などもオンラインへとシフトしていく、ニューノーマルなライフスタイルが浸透してきているのではないでしょうか。デジタルネイティブ世代が中心となるこのライフスタイルでは、スマートフォンを利用していろんな情報へアクセスし、その中から自分が納得できるものを選ぶことが当たり前の行動になります。コロナ後、ライフスタイルが多様化しお客様のニーズが変化している状況で、従来の料金プランではすべてのお客様のニーズにお応えすることが難しくなっていました。「料金プランを見直したり、サブブランドを追加するだけでは解決しないのではないか」「お客様のライフスタイルに合わせてコンセプトから検討し、そのお客様にとってメインとなる料金プランを提供する必要があるのではないか」との考えで生み出されたのがahamoです。
 
 そしてahamoには、若年層のシェアを拡大していきたいという狙いもありました。ahamoのメインターゲットは、社会人2年目ぐらいの20代前半のデジタルネイティブ世代です。この層は、「おおよそ50%のお客様がキャリアの変更を検討されている」という大きな流動性があります。なぜこのタイミング(年代)なのかというと、それまではご家族名義で契約されていたお客様が、自立して社会人になっていくなかで初めて「ご自身で携帯キャリアを選択する」機会になるのです。そういったお客様のニーズにお応えできる料金プランがないのではないか、そういったサービスを提供できないかと検討を続けてきた結果がahamoになります。
 
ー諸外国の料金と比較して、政府が「携帯料金の値下げ」を求めていました。政府からの声の影響はありましたか?
 
 ahamoの検討は以前から進めておりました。発表のタイミング的にそういったもの(政府の意向)があったと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、システム開発などの「環境」と「準備」が整い発表させていただいたタイミングが昨年末だったということです。日本の料金が諸外国よりも高いからというよりは、お客様の多様化するニーズに対してしっかりとお応えできるサービスを提供していきたいという流れの中から生まれたとご理解ください。そういう意味では、事前キャンペーンのお申し込み件数については順調に推移していると聞いていますので、ターゲットとしているデジタルネイティブ世代のニーズにマッチしているのかなと思っています。
 
ー今は20歳以上でないと契約ができない(※)のですが、対象年齢を下げることはありますか?
 
 今後の検討としてありえない話ではないと思います。ターゲット層は我々が決めていることであって、そこに対してお客様がどのような反応をするのかは、始めてみないとわからない部分です。そういった意味では、お客様からのご要望をお聞きしながら検討していくことになります。同時に20歳以上であれば誰でも契約できるというサービスですので、その辺の情報を見ながらさらに検討していくことになるかと思います。
 
 ※:親権者が契約し、20歳未満のユーザーを利用者登録することは可能
 
ー高齢者がスマホに移行することへの期待もあるのですか?
 
 ご高齢の方にも様々な方がいらっしゃり、一概には言えませんが、スマホへ移行される方向けには、「はじめてスマホプラン」を4/1から提供開始することを発表しております。スマホでのご利用に慣れて頂いた後にahamoに移られるといったことはあるかと思っております。お客様の多様なニーズに「プレミア」「ahamo」さらには「エコノミー」でお応えしていきたいと思います。
 

参考:ドコモの料金戦略

 
 
ー先日、ソフトバンクも新しいサービスを発表しました(参照:ソフトバンクプレスリリース 2020年12月22日「20GB+「LINEがギガノーカウント」を月額2,980円で提供」)。他社とのサービスとの違いはどこですか?
 
 今回SoftBank on LINEが同等の料金ということで、他社様の新プランの内容についてコメントできる立場にはございませんが、海外でも追加料金なしでデータ通信をご利用いただけるというところが強みかなと思います。あとはネットワークですね。ドコモのネットワーク品質はご好評いただけている部分だと思いますので、そこは強みになっているのではないでしょうか。
 
 
ーahamoの登場がスマホ業界に与える影響をどのようにお考えですか?
 
 時代や状況に即して、すごいスピードでお客様のニーズは多様化・変化しているように思います。「一つひとつのニーズに寄り添いつつ」というのがahamoのコンセプトの一つでもあるのですが、お客様とともに成長し我々も学んでいく、そして新しいサービスを提供していきたいです。その取り組みがどんどん加速していき、料金の低減化だけでなく、そこにどのような付加価値を載せられるのか、コンテンツなども含めてお客様のニーズに細かく答えることがいっそう大切になってくると思っています。
 
 
ー最後にAsiaX読者へのメッセージを。
 
 コロナ禍をはじめてとした苦しい状況ではあるのですが、お客様のニーズに即した形で検討を進め、新しいサービスなどを提案させていただきたいと思っております。そのためには、一番重要なのはお客様のお声です。日本においてドコモに忌憚のないお声をお寄せいただき、お客様の真のニーズを探していきたいと思っています。ぜひご契約をいただいた上で、我々とのコミュニケーションを取っていただければと思います。
 


 
 今回ahamoについて、より詳しい内容を伺うことができました。昨年末から何度も報道されていた政府の「携帯料金の値下げ」要請のために、どうしても”上からの圧力”でできたプランだとの印象を持ちがちです。日本の携帯料金が高いとされていたデータ容量月20GBの料金プラン(参照「電気通信サービスに係る内外価格差調査」)を対象としていることもその印象を強めてしまいました。しかし、その印象など関係ないくらいユーザーにとっては魅力的なプランであり、キャリア側にとっても改善すべき最優先事項であったのではないでしょうか。システム開発による環境の整備、より効率的な手続きを追求したオンラインのみの対応などによってahamoは登場しています。そして、ソフトバンクはahamoに対抗するプランを発表しました。こちらもオンライン専用の新ブランドです。
 
 諸外国と比べることで「日本の携帯料金は高い!」といえた時代から、「安さや品質、自分にあったプランを選択できる」時代へと変わってきています。大手キャリアの一角であるauも最安値となる新プランを発表しました(auが1月13日新プランを発表「20GBが月額2,480円、auのオンライン専用の新料金「povo (ポヴォ)」を提供」)。携帯料金は、情報に対して不満の声を上げる時代から、情報を探して選択していく時代へ。海外での使用法も含めて、ユーザーが取捨選択していく。選択を間違えないためにも、正しい情報をできるだけ早く手に入れることがより大切になっていくのではないでしょうか。
 

参考:ahamo公式サイト


 


村山 啓二郎(むらやま けいじろう)
NTT DOCOMO ASIA Pte. Ltd.
President & CEO
 
株式会社NTTドコモ入社後、営業やサービス企画を挟みつつ、主に国際事業部門で投資管理、サービスの海外展開を担当。2019年に来星、アジアでのアンメットニーズ(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要)の探求、解決をミッションに企業向けソリューションを提供すべく、NTTドコモアジアの代表として奮闘中。週末は趣味の楽器演奏やボルダリングに勤しむ日々。

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