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2021年1月12日

インドネシア自動車業界: EVアジア生産ハブを目指す動きが加速

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 インドネシア政府が2019年に打ち出した電気自動車(EV)の「アジア生産ハブ化」計画を受けて、海外メーカーによる現地進出の動きが本格化している。政府は2019年8月、EV生産の域内ハブ化を目指す長期プランを発表し、2022年からの製造本格化、2025年までの2割達成(自動車生産全体の20%をEVにする目標)を掲げた。その実現に向けて、海外企業の誘致を積極化。EV用リチウム電池の材料(ニッケル)が豊富という立地上の優位性を強調しつつ、税制の優遇を含めた各種インセンティブをアピールしている。これに呼応する形で、2020年11月には韓国大手の現代自動車がEVの現地生産計画を発表した。
 

インドネシア:現代自、2022年までにEV現地製造へ

 韓国の現代自動車は2022年までに、西ジャワ州ブカシ県のコタデルタマスに建設中の工場で電気自動車(EV)の生産を開始する。11月16日にオンラインで開催された同州の投資サミットで現代自の代表者が明らかにした。国内で販売するほか、タイなど周辺国に輸出する。ジャカルタポストが11月17日付で伝えた。
 
 15億5,000万ドルを投じて東南アジアで同社初となる直営工場の建設を進めており、現在の進ちょく率は60%。敷地面積は77万6,000平方メートルで、早ければ2021年末にも稼働を開始し、まず化石燃料車を生産する。年産能力は当初15万台を予定。最終的には25万台まで引き上げる。EVの電池には国内で採掘・精錬されたニッケルを使い、部品の現地調達率は40%超とする。
 
 インドネシアはニッケル鉱石の生産量で世界1位。こうした中、政府はリチウム電池やEVをインドネシアの一大産業とする政策を掲げており、2025年までにEVの輸出25万台を目指している。[亜州ビジネスASEAN 11月18日付ニュース]
 


 その他の動きでは、同じく11月にインドネシア投資調整庁が「車載用バッテリー中国大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が総額51億ドルを投じ、インドネシアにEV電池の製造拠点を建設する」と明らかにしたほか、「ジョコ大統領が米EV大手のテスラに対し、インドネシアへの投資を呼びかける」とも報じられた。また9月には、「韓国ケミカル大手のLG化学が近く、EV電池の生産を目的とするインドネシア拠点の建設を正式決定する予定」と伝えられている。

 

 

EV生産ハブ化で業界地図に変化も

 インドネシア政府の思惑通りに外資主導でEV生産が急拡大した場合、同国の自動車業界は「日系メーカーの独壇場」という現状に変化が生じる可能性もある。
 
 自動車販売の国内シェアは、日系各社の合計が90%を上回る状態だが(下表)、将来的なEVの普及によって他の海外勢がシェアを伸ばすことも考えられよう。もちろん、日系各社による現地EV生産の取り組みにも期待したいところだ。
 
 いずれにしても、インドネシア政府が推進する「EVアジア生産ハブ化」計画からは目が離せない。

 

 

(亜州リサーチASEAN編集部)
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