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2020年12月10日

マレーシア自動車業界:優遇税制効果で新車販売が急回復

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 春先に惨憺(さんたん)たる状況に陥っていたマレーシアの新車販売は、夏場から秋口にかけて劇的に回復し、6月から10月までの5カ月連続で前年比プラスを達成した。そのきっかけは、6月に導入された自動車向け優遇税制。12月末までの期間に乗用車の販売サービス税(SST)を減免し、国内で組立生産された車両について100%免除、輸入完成車(CBU)について50%減とすることが決定された。
 
 夏場以降はまさに、その効果がダイレクトに表れた格好だ。コロナで冷え込んだ消費を刺激すべく、政府は種々の取り組みを行っているが、自動車向けに実施した今回の優遇税制は成功事例の代表格と言ってよい。
 
 まず、最新の新車販売動向を弊社ニュースで確認しておく。
 

10月の新車販売5%増、5カ月連続で増加

 マレーシア自動車協会(MAA)が11月18日発表した2020年10月の国内新車販売台数は、前年同月比5.2%増の5万6,670台だった。9月実績(26.4%増の5万6,444台)との比較では伸び率が大きく減速したものの(10月半ばから首都圏やサバ州で新型コロナウイルス対策の厳格な活動制限令が発動されたことが要因)、対前年のプラスは5カ月連続になると国営ベルナマ通信などが伝えた。
 
 セグメント別にみると、乗用車は前年同月比5.7%増の5万1,795台、商用車は0.2%減の4,875台だった。生産台数は全体で5万8,631台となり、前年同月から5.1%増加。前月比では12.8%増と、6カ月連続で前月を上回った。乗用車は前年同月比5.5%増の5万5,063台、商用車は0.4%減の3,568台だった。
 
 1~10月の全体の販売台数は前年同期比19.9%減の39万8,159台。乗用車は20.2%減の36万1,803台、商用車は16.9%減の3万6,356台だった。生産台数は全体で22.2%減の37万4,494台。乗用車は21.2%減の35万4,944台、商用車は37.5%減の1万9,550台だった。[亜州ビジネスASEAN 11/19付ニュース]

 

 
 10月の伸びが低かったとはいえ、全面的な活動制限令の影響が直撃した4月の惨状(99.7%減の141台)と比べた場合は雲泥の差といえる。いずれにせよ、すでに最悪期は脱したと見てよい。
 
 同月はまた、国産車メーカー各社の販売も上向いた。一例として、ダイハツの資本も入っているプロドゥアの好調ぶりを紹介する。
 

プロドゥアの10月販売2.7万台、過去最多を再更新

 ダイハツなどが出資する国産車メーカーのプロドゥアは、2020年10月の販売台数が2万6,852台だったと発表した。9月の2万5,035台を7.3%上回り、2カ月連続で月間最高記録を更新した。
 
 車種別では小型ハッチバック「マイヴィ」が8,052台で最多。これに4ドアセダン「ベザ」が6,895台、5ドアハッチバック「アジア」が6,738台で続いた。これら3モデルは各セグメントでトップシェアを維持した。
 
 ザイナル・アビディン・アフマド最高経営責任者(CEO)は、生産ピッチを速めるため、10月だけで部品購入に6億リンギ(約150億円)を費やしたとコメント。新型コロナウイルス対策を講じながらも工場稼働率は98%に達しているとした。
 
 マレーシアでは、政府が6月半ばから年末にかけて乗用車の販売サービス税(SST)を減免したことで新車販売が回復。こうした中、プロドゥアは販促攻勢を強める方針で、11月には7人乗りの小型スポーツ多目的車(SUV)「アルス」で1,500リンギ(約3万7,000円)のキャッシュバックを行うほか、最大2,000リンギの中古車下取りキャンペーンも実施するとしている。 [亜州ビジネスASEAN 11/4付ニュース]
 


 
 もっとも、業界全体の通年販売台数は2割近い減少を強いられる可能性が高い。夏場以降に盛り返したとはいえ、やはり春先までの苦戦をカバーするには至らない模様だ。
 

 
 ホンリョン・インベストメントバンク・リサーチは今年7月時点のレポートで、「通年の国内新車販売台数が前年比18.6%減の49万2,000台に落ち込む」と予想した。その後、10月から一部地域で再び活動制限令が敷かれたこともあり、さらに下振れることも考えられる。それでも、2~3割の減少にとどまるのであれば、やはり6月に導入された優遇税制は多大な効果を発揮したといえよう。
 

(亜州リサーチASEAN編集部)
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