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会計・税務相談

2021年1月11日

Q.就労ビザの申請において申告する給与

Q. シンガポールで就労ビザを申請する際に申告する給与について教えてください。

 シンガポールで就労ビザを申請する上で、給与は重要な要件の一つになります。新型コロナウイルス感染症の拡大が経済に与えた打撃により、シンガポール国内でも解雇者数や失業率が上昇していることを受け、人材省(MOM)は外国人の雇用を抑制すべく、新しく申請する就労ビザの給与の要件について、エンプロイメントパス(EP)は2020年9月1日より月額4,500Sドル以上に、Sパスは2020年10月1日より月額2,500Sドル以上に、それぞれ引き上げました。また、金融業のEPについては、給与水準が他の業種よりも高いことを考慮し、2020年12月1日以後の新規の申請について月額5,000Sドル以上となります。これらの給与要件はどれも最低の場合であって、年齢や経験を重ねた申請者にはより高い給与水準が求められます。尚、既に取得済の就労ビザを更新する場合、これらの給与要件は2021年5月1日以後の申請に適用されます。
 

Q. 月額給与とは、どのような給与のことを指すのでしょうか。

 就労ビザの申請において申告する給与は、月額固定給(fixed monthly salary)とされています。これは、毎月定められた金額で本人に金銭で支給される給与を指します。月額固定給は、更に月額基本給(basic monthly salary)と月額固定手当(fixed monthly allowance)の2つにわけて申告します。固定給と称するように、月によって金額が変動したり毎月必ず支払われないような支給は月額固定給に含まれません。月額固定給に含まれない支給には、以下のようなものがあります。
 
 ・歩合給
 ・残業手当
 ・月によって金額が変動する各種手当
 ・インセンティブ手当など定められた要件達成の有無などによって支給が左右されるもの
 ・賞与、AWS(Annual Wage Supplement)などの一時金
 ・借り上げ社宅、子女教育費などの現物支給
 ・社会・労働保険や年金・財形貯蓄制度への雇用主拠出金
 ・経費精算などの従業員が立て替えた費用の支払い
 ・退職・解雇・定年退職などに際して支給される一時金などの支払い
 

Q. 給与は、シンガポールの雇用主からシンガポールで支給される給与に限られますか。

 そうとは限りません。日系企業では、シンガポールの子会社に派遣した駐在員の給与について、シンガポールの子会社からシンガポールドルで支給する金額と、日本の本社から日本円で支給する金額にわけている事例が多く見受けられます。このように、シンガポールで就労することに対して、シンガポール国外でも支給がある場合には、それも含めた総額のうち、毎月定額で本人に支給されるものが申告すべき給与となります。
 

Q. 給与は、手取金額を申告するのでしょうか。

 そうではなく、給与明細にある支給項目のうち毎月定額で支給される項目の合計を申告します。会社によっては、給与計算において見なし所得税や家賃相当額として毎月一定の金額を控除して給与額を算出している場合がありますが、これらを控除する前の金額を見る必要があります。
 

Q. 社宅の家賃は毎月定額で支払いますが、これは月額固定手当には該当しないのでしょうか。

 住宅手当が月額固定手当となるのは、雇用主が従業員本人に対して毎月現金で定額の家賃補助を手当として支給する場合を指しています。この場合、住宅の賃貸契約やメンテナンスは全て個人の責任で行うことを前提としています。家探しから賃貸契約、メンテナンスまで雇用主が手配する借り上げ社宅の提供は現物支給であり、月額固定手当にはあたりません。
 

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著:Tricor Singapore Pte Ltd 斯波澄子

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