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ビジネスインタビュー

2013年1月20日

プレミアムな市場に手ごたえ

サントリー酒類株式会社 代表取締役社長 相場康則さん

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2003年の発売以来、過去最高の売り上げを更新し続けているザ・プレミアム・モルツ。サントリーは昨年8月、シンガポールでザ・プレミアム・モルツ樽生ビールの販売を開始した。他とは違う大きな特徴は、すべて日本国内の工場で生産し輸出していること。「本物の日本産」を携えた相場康則社長に、成長著しいシンガポール市場での「プレミアム」商品の展望を伺った。

 

 

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――日本産のおいしさにこだわる理由は。
ザ・プレミアム・モルツの特徴はコクと香り。濃くて旨みがあるけれども、非常に飲みやすい、受け入れられやすい味です。これは厳選された麦とホップ、天然水が三位一体となってできるものです。一つの大きな要素は天然水。日本は水が良いですから。ビールは工場の醸造釜によっても味が違います。日本産を良い状態で輸送し、提供することが一番だと思っています。

 

――日本と同じ品質を維持するには、ご苦労も多かったそうですが。
我々は製造時の品質にはものすごく自信を持っています。ただ、いかに良いものを作っても、飲むときにおいしくないと本当のおいしさが伝わらない。そこで、1つ目は輸送の時の鮮度管理が問題でした。赤道直下のシンガポールまで運ぶため、通常のコンテナではなく特別な冷蔵コンテナを使用しています。2つ目はお店でお客様に出す時の品質の維持です。我々は「飲用時品質」と呼んでいます。シンガポールでの樽生の販売代理店、株式会社折原様は、日本でもご経験豊富です。単に輸入販売するだけでなく、飲食店の皆様に樽生サーバーのメンテナンス方法や注ぎ方をご案内する体制を整えてくださったことで課題がクリアされました。日本で製造してから、シンガポールでおいしく味わっていただくまでの総合体制が、関係者の皆様の努力で実現できた。本当にうれしく思っています。

 

――販売開始から約半年、シンガポールでも飲用時品質の考え方は定着しましたか。
ザ・プレミアム・モルツの取扱店のオーナーの方々とお話しして、驚きました。あるお店はオーナーが「私が自分でビールサーバーの洗浄をして、ビールも注いでいます」と。樽生ビールはサーバーの洗浄も含めて、どういう注ぎ方をするかで味が大きく変わります。ビール7、泡3の比率できれいに注がれたビールは中をかき混ぜるとグラスからフワーッと膨れる。炭酸ガスがきちんと残っているんですね。シンガポールの取扱店では、日本とも変わらないくらいこだわりを持って提供していただいているとわかりました。

 

――シンガポール市場での手応えは。
シンガポールの高級飲食店の値段を聞いてびっくりしました。東京・銀座よりもよっぽど高いですよ。シンガポールのお客さんは質の高い食事に対してきっちりコストを払う。そういうお国柄だからこそ、プレミアム商品が成立します。おいしいものを提供するお店に一番フィットする商品がザ・プレミアム・モルツですから、オーナーの皆さんの口コミで大きな広がりが期待できるのではないかと思います。いずれどこの店に行ってもザ・プレミアム・モルツがあふれているという、夢のような状態ができるんじゃないかと思っています。

 

――軽さや爽快感が売りの地元のビールとは一線を画していますね。
我々は地元のビールと戦うつもりではないんです。屋台のような庶民的な場所でカジュアルに楽しむビールと、和食を中心にしたレストランで味わうプレミアムなビールとは、場面に応じて両方が成立すると思っています。特に平均所得の高いシンガポールは、我々にとって非常に有望な市場で、プレミアム商品にはうってつけの土地です。新しいタイプのザ・プレミアム・モルツは、地元の方々にとっては新鮮な印象で受け入れてもらえると思います。

 

――樽生ビールの今後の東南アジア進出の展望について教えてください。
ザ・プレミアム・モルツ樽生は現在、韓国、香港、シンガポールで販売しています。アジア地域は物流面で非常に有利です。ビールは鮮度が大切。オファーは世界各地からありますが、アメリカやメキシコなどに持っていくとなると、製造から2〜3ヵ月経ってしまい鮮度が落ちます。なので、遠い国では難しい。アジア地域などが今のところは実現可能な地域です。飲食店での樽生サーバーのメンテナンスなど、飲用時品質の管理体制が整った場所であればあらゆるところに進出したいと思っています。ザ・プレミアム・モルツを最高においしい状態で少しでも多くの国の皆様に届けていきたいですね。

 

――ウイスキーなど別のアルコール飲料はシンガポールでどう展開されますか。
角ハイボールと日本食を合わせる飲み方は日本で流行しています。すでに台湾や中国でも、若者を中心に普及し始めています。シンガポールにも日本食レストランがますます増え、角ハイボールの売り込みにとって大きなチャンスととらえています。また、アジアの中でも所得の高いシンガポールでは、角瓶に加えて、響、山崎、白州といったプレミアムウイスキーが実際にご好評いただいています。バーなどもたくさんありますし、プレミアム商品を中心に、積極的に売り込んでいきたいですね。

 

――読者の皆さんにメッセージをお願いします。
個人的には、家族旅行以来20年ぶりにシンガポールを訪問しました。オーチャードの店も当時とかなり入れ替わっていましたね。大きなビルも多く発展ぶりがものすごい。日本から遠く離れた、活気ある市場で活躍する皆さんの息吹を感じ、大きなエネルギーをいただきました。そんな皆さんにぜひ日本で高い評価をいただいているおいしいザ・プレミアム・モルツを味わっていただけたらうれしい限りです。特に当地は平均気温も高い、ビールに合う国ですから。

 

相場 康則(あいば やすのり)

慶應義塾大学商学部卒業後、サントリー入社。洋酒事業部課長、ビール事業部長、首都圏営業本部長、常務取締役ビール事業部長兼プレミアム戦略部長などを経て、2009年からサントリー酒類代表取締役社長。2011年からサントリーホールディングス専務取締役。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.250(2013年01月20日発行)」に掲載されたものです。
取材=石澤 由梨子、佐藤 邦寛

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