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法律相談

2020年6月2日

Q.リモートワークに関する法的留意点

このコーナーでは、読者の皆様のお悩み・ご相談を、会計・税制、 法律のプロフェッショナルが無料でお答えします。

法的観点から見るリモートワークの注意点

 Q.1 弊社では、サーキットブレーカー(2020年5月初旬時点:2020年4月7日〜6月1日)解除後も暫くの間、リモートワークの継続を考えています。法的観点から、どのような点に気をつければいいか教えてください。
 
 A.気をつけていただきたいポイントが3点あります。

1.雇用契約書・就業規則の見直し

 シンガポールでは、2016年4月1日から、雇用条件の重要項目(Key Employment Terms)について、契約書等で明記することが義務付けられています。そのため、リモートワークに伴い、基本給・役職・主な職務・勤務場所等の重要項目に変更がある場合には、雇用契約書・就業規則の規定も変更する必要があります。特に、リモートワークの従業員は会社との間でコミュニケーション不足になりやすいため、職務の内容(成果物やパフォーマンスに関する指標)を具体的に記載することが肝要です。勤務場所の記載について、会社の所在地以外で勤務する場合には、実際の勤務場所を明記するよう強く推奨されているため、実際の勤務場所(従業員の自宅等)を追記することが望ましいでしょう。

2.情報保護ガイドラインの見直し

 リモートワークの場合、会社の保有情報の漏洩リスクが高まります。そのため、従業員のパソコンからの会社情報漏洩の防止対策(ファイアーウォールやウイルス対策ソフトの設定等)や、第三者による会社ネットワークへのアクセス防止対策(パスワード、指紋・音声認証の要求等)を確実にすることが大切です。そして、社内の情報保護ガイドラインを見直し、これらの内容をガイドラインに追記しておくことも、後の紛争予防の観点から重要です。

3.報告および指導内容の保存

 従業員の業務報告先の上司を明確にし、上司が従業員の仕事の進捗状況や成果を評価し、適切な指導・助言ができるような環境(自動管理システム、オンライン面談等)を整えることも大切です。従業員の報告内容や上司の指導内容は、将来、従業員について、解雇・減給する必要が生じた場合に法的に重要になるため、その内容を記録に残して保存することを忘れないようにしてください。

 

日本からリモートワークする際、就労ビザは必要?

 Q2. 弊社では、新型コロナウイルスの関係で日本に一時帰国している日本人従業員がいます。彼は、今後1年程度、日本からリモートワークを続けたいとのことで、弊社はこの申し出を承認しました。彼の就労ビザ(EP:Employment Pass)の有効期限が今月末に切れるのですが、更新をする必要がありますか。
 
 A.シンガポールの就労ビザは、シンガポール国内に滞在して就労する際に必要となります。そのため、シンガポール国内に滞在して就労することが要求されていない外国人は、原則として、シンガポールの就労ビザを取得する必要はありません。したがって、当該日本人従業員が今後1年程度日本に滞在して就労し、シンガポールでの滞在を予定していない場合、その期間の就労ビザを取得する必要はありません。そのため、現時点で、就労ビザの更新手続きをする必要性はないように思われます。

 

研修の場合、就労ビザは不要?

 Q3. 日本からリモートワークを続ける予定の日本人従業員は、弊社の社内研修に参加するため、来年度初めにシンガポールを訪れる予定があります。社内研修へ参加する場合には、就労ビザ(EP)の取得が不要であると聞いたことがあるのですが、本当ですか。
 
 A.貴社で雇用されている日本人がシンガポールを訪れ、社内研修に参加する場合には、シンガポールの就労ビザを取得する必要があります。
  
 確かに、貴社の日本本社で雇用されている従業員がシンガポールでミーティング、研修または視察に参加するなどの一定の活動には、業務に関連するケースであっても、就労ビザの取得が免除される場合があります。しかし、このような免除は、シンガポール国内の会社との間で雇用契約を締結している従業員に対しては適用されません。したがって、シンガポールの企業である貴社との間で雇用契約を締結している日本人従業員が社内研修のためにシンガポールを訪れる場合は、原則どおり、就労ビザを取得する必要があります。

日本法弁護士・シンガポール外国法弁護士 山本裕子

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