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法律相談

2020年3月30日

Q.新型コロナウイルスにまつわる法律問題Q&A

このコーナーでは、読者の皆様のお悩み・ご相談を、会計・税制、 法律のプロフェッショナルが無料でお答えします。

新型コロナウイルスの影響で海外企業からの納品が止まった場合、損害賠償は請求できる?

 Q.新型コロナウイルスの影響で、海外企業からの納品が止まり、弊社の製造過程に遅れが出ています。仕方がないということはわかるのですが、弊社も取引先からクレームを受けている関係上、海外企業に対して、弊社に発生した損害の賠償を請求できないでしょうか。
 
 A.海外企業との間で締結した「契約書」を確認してください。多くの場合、契約書に「地震、洪水のような自然災害、戦争、暴動、テロ行為のような社会異常事件、疫病や伝染病等が発生したことを原因として、客観的に契約の義務履行が不可能な場合には、責任を免除する」というような文言が記載されています。このような条項のことを、不可抗力条項 (Force Majeure Clause)といいます。
 
 契約書にこのような不可抗力条項が規定されている場合には、新型コロナウイルスの影響で、海外企業が貴社に対して製品を納入できなくなったとしても、海外企業はこの条項を根拠に免責される可能性があります。もっとも、不可抗力条項が規定されていることのみを以って、海外企業が必ず責任を免れるというわけではありません。
 
 海外企業側が、下記についてこれらを立証しなければなりません。
 ①新型コロナウイルスの流行が不可抗力事由に該当すること
 ②当該不可抗力事由が発生したことを遅滞なく貴社に対して通知したこと
 ③当該不可抗力事由が原因で契約が履行できなくなったこと
 ④損害が免責の範囲内のものであること
 
 仮に、海外企業が上記事由について立証することができなければ、原則として海外企業に対する損害賠償請求は認められます。
 

マスクの高額転売への規制は?

 Q.弊社は従業員にマスクの配布をしていたのですが、マスクを買い占めた業者がオンライン等で定価を大幅に上回る価格で転売しており、定価でマスクを購入できず困っています。シンガポールにおいて、マスクの高額転売は、取り締まられているのでしょうか。
 
 A.シンガポール貿易産業省 (Ministry of Trade and Industry)は、価格統制法 (Price Control Act) に基づき、マスク等の高額販売業者に対し、仕入れ原価、利益率、高額販売の理由を書面にて説明させるという対策を講じています。業者の説明次第では、立ち入り検査等の対象や2万Sドル以下の処罰の対象になる可能性があります。実際に、同省は、Lazada、Carousell、Qoo10、Shopee等のオンラインプラットフォームに対し、マスクの高額販売業者に関する情報提供を呼びかけており、高額販売業者に対しては、価格を是正するよう勧告しています。また、シンガポール消費者協会(CASE)およびシンガポール競争・消費者委員会(CCCS)も状況を注視し、マスク等に関する不公正な取引がないかを調査し、規制を強化する姿勢をみせています。
 

新型コロナウイルス感染者が行動経路を隠すことへの対策は?

 Q.日本では、新型コロナウイルスに感染した人が、直近の行動経路についてスポーツジムに通っていた事実を意図的に隠していたことが事後的に判明して問題となりました。シンガポールではこのような事態に対して、どのように対応していますか。
 
 A.シンガポール保健省(Ministry of Health)は、感染症法(Infectious Disease Act) に基づき、感染者等に対して、自己が知り得る情報を正確に申告する義務を負わせています。そして、同法に違反し、有罪となった者に対しては、最大1万Sドル以下の罰金または6ヵ月以下の懲役もしくはその両方を科す場合があります。実際に、新型コロナウイルスへの感染者が虚偽情報伝達および行動特定調査妨害罪の被疑事実で起訴されるというケースも発生しています。シンガポールでは、申告情報が虚偽であるか否かは、監視カメラ等の調査で比較的簡単に判明します。また、起訴も比較的簡単になされることから、検査官に対して虚偽情報を申告することは、非常にリスクのある行為となりますので、注意が必要です。
 
 

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※注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

日本法弁護士・シンガポール外国法弁護士 山本裕子

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