不況だからこそできる本質的構造改革

　新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中に爆発的に広がり、社会的にも経済的にも大きなインパクトを起こしています。コロナショックにより、事業にマイナスのインパクトがある場合、如何にコストを抑え、キャッシュフローをどう乗り切るかが、常識となっているかと思います。特に日本企業は、キャッシュを蓄え、もしもに備える傾向が強くあります。しかし、常識に囚われるのではなく、不況時に「ピンチをチャンスにしていく」非常識な会社が不況後のチャンスを掴みます。
 
　今回の記事では、非常識だと思われるかもしれませんが、グローバルでの成功企業が行っているピンチをチャンスにする施策について扱っていきたいと思います。
 
　まず、シンガポールには、「地域統括機能」を持つ会社が多いですが、コロナショックにより、子会社毎の事業インパクトがあるのかをタイムリーに把握する必要があります。エクセルのやりとりでタイムラグが発生する場合、クラウドなどを入れて、東南アジア各国の子会社の業績管理をタイムリーに行う仕組みづくりを加速させるチャンスでもあります。こういう時期だからこそ、PL(損益計算書)のみならず、キャッシュフロー管理も含めて地域統括がタイムリーに把握できる IT ツールを導入することに、子会社も反対しづらい状況でもあり、不正などが起きないプロセスを入れた、仕組みを作る好機とも言えます。しかし、これはいわゆる「守りの打ち手」。
 

不況だからこその「攻めの打ち手」

　こういう時期にこそ、多少余裕のある非常識な素晴らしい会社は、この不況の時期を、「構造改革」の好機と位置付け、不況の時期の後のことを考えて、「攻めの打ち手」も考えています。どのような「攻めの打ち手」があるのか、幾つか見てみましょう。

ビジネスモデルの転換

　長期的な時代の流れにあわせて、ビジネスモデルを転換した方がいいという想いがあっても、既存事業が強いとなかなか転換できないものです。例えば、長期的には、店舗ビジネスからオンラインへのシフトをしたいと思っていても通常時にはなかなかできないものです。しかし、こういう不況の時こそ、一旦、既存事業をゼロベースに考えて、新しいことにチャレンジする、もしくは、ピボット(方向転換、路線変更)してみる良いチャンスです。

不採算事業の撤退や事業統合などの事業再編

　既存事業を辞めるというのは、思い入れもあり、なかなかできないものです。ただ、不況だからこそ、思い切って、不採算事業を撤退するというのも、社内や株主のコンセンサスを得やすいものです。

組織再編

　部署統廃合や、人の異動や抜擢もこの時期だからこそ、周りの反発がそれほどなく、できるもの。普段からやりたいと思っていた組織再編を思い切ってやってみましょう。特に、不況の時期は、人の強みを活かすマネジメントにして、強い筋肉質な組織にしておきましょう。

 
　さらに攻めるとすれば、
 
　●不況で時価総額が落ちているが、今後、シナジーが湧く会社・事業の M&A
　●これからの時代に向けての成長の種を持っているベンチャー企業の買収・出資
　●勢いのある若手を抜擢しての次世代を見据えた新規ビジネスへの仕込み
　●不況だからこそ、市場に出てくる優秀な人を採用し、活躍してもらうための人事制度の改訂
　●次世代リーダーの育成、次世代経営者抜擢
 
　なども時間がある今だからこその効果的な時間とお金の使い方になるでしょう。
 
　ぜひ、ピンチをチャンスに変える「逆張り経営」を、実現してみてください。
 

森田 英一(もりた えいいち)
beyond global グループ President & CEO
大阪大学大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて人・組織のコンサルティングに従事。その後シェイク社、beyond global社を創業。日系企業のグローバル化支援事業を手掛ける。社員の主体性やリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発ファシリテーションに定評がある。日本全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。主な著作「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(PHP新書)など。日経スペシャル「ガイアの夜明け」「とくダネ!」などメディア出演多数。シンガポール在住。シンガポール在住。
人と組織の可能性を拓く beyond global グループ（シンガポール・タイ・日本）
グローバルリーダーシップ研究所
Email: info@beyond-g.com