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2013年12月2日

アジアへ新天地を望む 国内需要縮小も、新規市場開拓でさらなる飛躍

日本通運株式会社 執行役員 南アジア・オセアニア地域総括 兼  南アジア・オセアニア日本通運株式会社 取締役社長 兼  シンガポール日本通運株式会社 取締役社長 髙橋 康紀さん

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――運輸会社は産業界の手足であり、景気に左右されやすい一面も。現在の事業構造はどうなっていますか。
航空、海運、倉庫を中心に、重機建設、引越し、旅行業という構造です。日本の国内物流に関して言えば伸び悩んでいるというのが実情で、これは景気の後退や内需の減少、少子高齢化、技術革新などが輸送の需要減少の原因です。技術革新で例えると、高度成長期の洗濯洗剤と比べて、現在のものは台所洗剤と同じサイズ。テレビもそう。ブラウン管から薄型に変わった。例えばかつてはトラック10台が必要だったものに対して今では2台で済んでしまうくらいコンパクトになっている。ひとつの時代の変化だと言えます。大震災やリーマン・ショック、タイの洪水、さらに、円安、アベノミクスが起こったりと経済環境の変化が激しい、予測しにくい時代になりました。右肩上がりの事業展開が難しくなってきているというのが実態です。

 
――運輸業界日本国内トップとしての強みは?
これまで日系企業の海外進出に伴うB2B(Business to Business:企業間取引)に特化した事業を展開してきました。企業間貨物が中心ですから、表向きには見えにくい。だが、経済活動の舞台裏を支えていると自負しています。よく社員に我々の仕事は「社会インフラ」である、と話をしますが、電気や水やガスのように物流は届いて当たり前で、滞ったらパニックが起こる。生活に不可欠なものです。「物を運ぶ」ということはネットワークがないとできない。それに付随するビジネス・セグメント、つまり総合物流業者としてのサービスに自信を持っています。工場設立やそれに伴う赴任時の引越しに始まり、工場の設備を据え付けたり、工場設備の重量品輸送や新幹線や発電所のタービンを運んだりもする。さらに、工場を作るための材料の海上および航空輸送、製品を作るための材料やできた製品を保管する倉庫業、陸続きのところに配送するトラック事業など総合物流を持っているのが我々の強みです。

 
――グローバル展開を積極的に進めています。シンガポールの位置づけは?
シンガポール港が上海に次ぐ世界第2位の港であることからもわかるように、南アジアのリーディング・カントリーとして港や空港などのインフラ設備は素晴らしい機能を持っています。いわば、シンガポールは南アジアのロジスティックセンターもしくはディストリビューションセンターなのです。さらに情報が集まるという利点、税制面の優遇、安全性の優位性があることからも、南アジアの統括拠点としての役割を担っていく上で重要であると位置づけています。

 
――今後の事業戦略は?
長期的には、全社における海外の売上高比率を現在の30%から50%まで引き上げようという目標を掲げています。とはいえ、70%を占める日本国内の売り上げは大きい。この30%を2015年までの3ヵ年計画で40%まで伸ばそうという計画です。日通全体の売り上げが今、1兆6,000億円。その4割を海外売上にしようという中で期待されているのが、この南アジア・オセアニア地域。その成長が期待される市場を任されて、身の引き締まる思い、責任の重さを感じています。
国際間物流=グローバルにモノを運ぶ、という元来の事業を伸ばしていくことはもちろん、ASEAN諸国のGDPが顕著に伸びつつある現状から、消費需要がどんどん高まっていくことをにらんで、小売の需要に注目しています。食料品、アパレル、電気・電子関連製品、車、住宅関連に至るまで視野を広げていますが、特に生活用品やアパレルの販売物流は目下、注力している分野です。さらに、当地の医療・医薬(バイオ)関連産業の市場開拓にも目を向けており我々にとっては新たな挑戦です。

 
――ASEAN諸国での今後のビジネス展開はどのように?
ASEAN諸国といっても言葉も文化も違うから、南アジアとして戦略的に一くくりにできないのが難しいところ。経済的な視点から成長性や潜在性をグループに分け、様々な見方をしながら各国にあった戦略を立てていく。例えば、フィリピンやインドネシアのように島国におけるビジネス、タイやマレーシア、カンボジア、ミャンマー、ラオスなど陸続きのところ、またインドという巨大市場をどうするか。まったく輸送手段が確立されていないパキスタンやスリランカなどへも進出の機会を探っています。こういう状況を見極めた中で、現段階では2014年3月までにミャンマーとカンボジアに新会社を設立する予定です。両国はアパレルの工場が多く、今後日系企業の更なる進出が見込まれており、その波に乗ってビジネスを展開していきたいと考えています。

 
――シンガポール日本通運が設立されて40年を迎えました。
1973年8月22日に会社が創立され、シンガポールは米国日通に次いで2番目に歴史のある会社です。40周年を迎えられたのも、ひとえにお客様によるご愛顧のたまものであり、ここまで会社を築き上げてきた先輩方々や従業員の努力によるものです。深く敬意を表すと共に、非常に感謝しています。
トップの横顔

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日本通運株式会社 執行役員 南アジア・オセアニア地域総括 兼
南アジア・オセアニア日本通運株式会社 取締役社長 兼
シンガポール日本通運株式会社 取締役社長
髙橋 康紀 氏

 

――シンガポールの印象は?
非常に活気があっていいが、その反面物価は高いと感じています。8月生まれのせいか、暑いこともあまり苦になっていませんが、5月に赴任したばかりなので、これから、というところですね。

 
――多国籍社員とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?
あいさつ、ですね。コミュニケーションの第一歩だと思っています。異文化コミュニケーションを図るには、声を掛け合うこと。おはようございます!こんにちは!と笑顔であいさつできる社員、職場環境を作るよう努めています。

 
――キャリアにおいて、転機になったことはありますか?
香港に駐在し、世界一の物流量を誇る場所でビジネスができた経験が大きいですね。香港はその裏に「世界の工場」と呼ばれる中国の華南地区があるから強い。2002年に米国の西海岸で港湾ストライキが起きまして、急きょ、航空貨物でモノを運ぶことになりました。日本だけでなく香港からも貨物を約100トン積めるボーイング747のジャンボ(貨物専用機)を何十機もチャーターしました。これだけダイナミックでグローバルなサプライチェーンを取り仕切る仕事をした経験が大きいですね。突発的な案件に対して顧客にどう対応するか、ものの見方・視点がガラリと変わりました。

 
――休日・余暇の過ごし方は?
赴任してまだ間もないので、シンガポールをはじめ担当地域である南アジア・オセアニア諸国を回っています。単身赴任なので休日にはワークライフバランスに気をつけて過ごしています。

 
――座右の銘は?
「一日一生」。一日を一生だと思って精一杯やる。一日一日を一生懸命生きる。あとは、井上ひさしさんの「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでもゆかいに」。これが自然にできるようになったらいいですよね。

髙橋康紀(たかはしやすのり)
1980年、早稲田大学社会科学部卒、日本通運株式会社入社。2006年、池袋航空支店長、2009年、東京航空支店・国際貨物部長、2011年、東京航空支店長、2013年から現職。57歳

 

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.247(2013年12月02日発行)」に掲載されたものです。
取材=野本寿子・写真=Eugene Chan

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