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2020年3月8日

シンガポールで市場拡大!「ワイン業界」の エキスパートに聞くイタリアン・ワイン戦略

 2012年には5億5,000万Sドル(約440億円)だったシンガポールのワイン市場が2016年に10億Sドル(約800億円)と、成長が著しい(GlobalDataより)。そんなワイン市場で存在感を高めているのがイタリアン・ワイン。2019年11月にItalian Trade Agency主催で開催されたのが『Borsa Vini Italiani 2019』。イベント現場の慌ただしい中、ディレクターのレオナルド・ラディカティ氏と認定ワイン教育者であるリム・フィー・ペング氏のワイン専門家2名に、シンガポールにおけるワインビジネスやイタリアン・ワインについて話を聞いた。
 

 

Leonardo Radicati Interview


Leonardo Radicati(レオナルド・ラディカティ)
Italian Trade Agency(イタリアン・トレード・エージェンシー)ディレクター。
同社のパリ、香港、フィリピンを拠点としたディレクターを務めた後、現在はシンガポールを拠点にシンガポール、フィリピン、インドネシアを担当。現担当 3 カ国への伊系企業進出を、BtoB イベントや展示会、トレードショー開催を通じて 20 年の経験を活かしサポートしてきた。
メイド・イン・イタリー” の良さを世界に広めるべく情熱を注ぐ。政治学学士号、国際貿易修士号。

今回のイベントの趣旨は?

 2018 年時点で世界最大のワイン生産量を誇るのがイタリアです。そのイタリアン・ワインの全10 産地から、29 名のワインプロデューサーが集まり、200種類以上のワインを展示、試飲できる1日限りのトレードエキシビションが『Borsa Vini Italiani』です。今年で開催2年目となりますが、今回はリム氏によるブラインドワイン・テースティングなどワインの味の違い、楽しみ方やイタリアワインの産地の違いなどを楽しく学ぶ教育の機会もプログラムに盛り込みました。
 

シンガポールのワイン市場概況を教えてください。

 シンガポールのワイン輸入市場価格は、2016年から2018年で19.8%上昇しています。2016年から2021年まででスパークリングワイン市場は5.1%、ワイン市場は5.2%のCAGR(年平均成長率)の伸びが予測されていて、シンガポールはワイン業界にとってポテンシャルが高い市場に位置付けられています。 また、シンガポール統計局のデータで 2018年にGDPが8万7,108Sドル(約700万円)と前年より4.6%増加しています。これらの数値が示すシンガポール人の購買力の強さは、当地が外食産業が盛んであることも含めると、ワインの消費がさらに進んでいく可能性を秘めた数字だと見ています。
 

シンガポールのワインの消費傾向は?

 シンガポールでのイタリアン・ワインのセールスは、ホテルやレストランでの売り上げが殆どです。理由はイタリア人が家で家族と食事を手作りで作って食べるのが好きであるのに対して、シンガポール人は外食を好むためです。そのためシンガポールでは食事と合うワインが好まれます。ただ、ミレニアル世代は、購買力がありながら価格を比較して買う傾向があるためオンラインでワインを購入することも多いです。シンガポールの消費者はヘルシー志向なので、赤ワインが特に好まれているようです。加えてシンガポール市場では、フランスのシャンパンに代わるものととして、価格が半分に抑えられるスパークリングワインを推していきたいと思っています。
 

イタリアン・ワインにとってシンガポール市場はどのようなポジショニングですか?

 ProWeinビジネスレポート2018によるとシンガポールは、イタリアン・ワインの三大輸出国。マーケットシェアは51%という重要な市場です。毎年多くの観光客が訪れるシンガポールでは、ホテルやレストランでの消費が大きく見込めるため、観光客を取り込むことにもワインプロデューサーたちは尽力しています。
 

競合であるフレンチ・ワインと、どのように差別化を図ってきましたか?

 シンガポールでは、ここ10年で人気となったイタリアン・ワインですが、実は、フレンチ・ワインの方がイタリアン・ワインより先にシンガポール市場に参入していました。ホテルやレストランへのアグレッシブなマーケティングが功を奏して、フレンチ・ワインの存在感は我々をはるかに超えていたのです。それが逆転したことにはイタリアン・ワインのマーケティングに要因がありました。紀元前3世紀から4世紀頃のギリシャ人によってぶどうの栽培とワインの製法がイタリアに伝えられたと言われています。イタリアン・ワインのマーケティングは、その長い歴史からくる “伝統” 感を強調し、そこにどのような価値があるのか、産地ごとに異なるワインについて知るワインマスタークラスを通した “教育” に力を入れることでファンを増やし続けてきました。そして、これからも増やしていくのだと思います。
 

Lim Hwee Peng Interview


Lim Hwee Peng(リム・フィー・ペング)
認定ワイン教育者(CWE)・フレンチ・ワイン学者 (FWS)。
2017年ソムリエ・メンター・オブ・ジ・イヤーを受賞しシンガポールのF&B業界でソムリエたちのメンターとして頼られる存在となる。
2018年にはWine Scholar Guildより、フレンチ・ワイン・スカラー・プログラムにおいて最優秀インストラクター賞を受賞。ワイン教育者として、東南アジアで数百人を越える生徒をワインスペシャリストに育ててきた。「Decanter Asia Wine Awards」など国際的なワインコンペティションの審査員を務める。

イタリアン・ワインの特徴はどこですか?

 “テクスチャー“の一言に尽きます。これはフレンチ・ワイン、スパニッシュ・ワインが真似できない、全く違った質感がイタリアン・ワインにはあり、これもセールスポイントだと考えています。
 

リムさんは、先ほど開催されたワインのマスタークラスで講師をされました。説明が初心者にとっても分かり易かったです。

 2005年に独立を決めた時に、アメリカ、オーストラリア、ニュジーランドや南米を旅してワインについて勉強しました。「ワインを作る人が一番ワインのことを知っているから」と、実際にぶどう栽培農家を訪ねて、太陽の下一緒に汗をかいて作業をすることで、他の人には話さないような知識を得ることができました。それにより、現在ワインマスタークラスで教えているようなレベルの複雑な内容を、もっとシンプルに伝えるための知識やヒントを得ることができました。
 

シンガポールでワイン認定証を取得したい人が増えたと思いますか?

 はい。ワイン認定証の需要の高まりは2009年頃から始まったと思います。例えばソムリエとして10年の経験があったとしても、証明する方法がない状態でした。それが、認定証があることで消費者から信頼され、自分も自信を持つことができるようになりました。
 

競合であるフレンチ・ワインと、どのように差別化を図ってきましたか?

 私が思うイタリアン・ワインのセールスポイントは、やはり味です。長い歴史に基づいた素晴らしいストーリーを伝えるとともに、味についてもハイライト(強調)すること。特にイタリアン・ワインは時間の経過により味わいが増すので、「時間をかけて楽しむことでその良さをより感じてほしい」ということもよく話しています。
 

シンガポールのワインの消費傾向と今後については?

 シンガポール人は、とてもオープンマインドです。特にこれといってワインの好みがはっきりしていることがあまりありません。「友人が好きだから試してみる」など、質が良いものであれば人の勧めに対してもオープンにトライする傾向にあります。そのため、マーケティングではどれだけ露出するかが伴になっていくと思います。

(取材・文/舞スーリ)

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