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危うし!日系企業の常識・非常識

2020年2月14日

ポストが増えない会社での優秀社員のキャリアパスは?

グローバル人事・組織開発のプロが斬る! 次世代のアジア地域における、これからの強い日系企業とは?

ポストが増えない=キャリアパスが提示できない?

 海外現地法人の人事から、「うちの会社は、ポストが増えるほど成長していないので、優秀な社員が入社しても、キャリアパスを提示できず、モチベーションを上げられないです。どうすればいいでしょうか?」とよく相談されます。
 
 ポストが増えずにキャリアパスが提示できないのは、「日系企業特有の問題」です。それは、「入社した人に辞めてもらうことは悪いことだ」という前提があるからです。
 
 頑張って成果を上げている人は、ポジションが上がっていく。ただ、一度上がると、大きなミスや不正などがない限り、そのポジションを保証するのが、これまでの日本企業のマネジメント手法でした。
 

外資系グローバル企業のマネジメント手法とは?

 一方、欧米グローバル企業などは、事業が急成長せず、ポジションが増えない状況下において、どのように社員のモチベーションを高めているのでしょうか?
 
 実は、業種や職種にもよりますが、「Up or Out」というポリシーでマネジメントしている会社が多く存在します。「ポジションが上がるか、それとも退職するか」同じポジションにずっと停滞・安住することは許さないという意味です。
 一般的に、人は3年以上同じ仕事を同じポジションをやっていると「マンネリ化」していきます。更にそれが続くと、変化を好まない「保守的」傾向が現れ、「クビにならないし、そこそこ仕事をすればいい」という意識になり、「ぬるま湯化」するのが世の常です。(あなたの会社では、その傾向はないでしょうか?)
 
 人は「コンフォートゾーン(居心地のいい領域)」にずっといると、易きに流れる癖がつくのです。ポテンシャルを引き出すためには、「ストレッチゾーン(背伸びをする領域)」の仕事を与え、成長してもらうことが大切です。
 

 
 この「ストレッチゾーン」を保つために、「Up or Out」というポリシーを用いて、3~5年以上、同ポジションにいることを許さない企業があります。一定年数以上、同じポジションにいる人は、普通にパフォーマンスを発揮していたとしても、次の人にポジションを引き渡すために「通常よりも上乗せされた退職金パッケージ」というメリットのある形を提示されます。会社も本人もハッピーになる辞め方をしてもらって、意図的に下の人が上のポジションに上がるチャンスを作り出していくのです。
 
 このような健全な新陳代謝で組織を活性化させるのが、外資系グローバル企業のマネジメント手法です。
 

「Up or Out」を取り入れている日本の企業

 このやり方は、日本には馴染まないと思われるかもしれませんが、人の新陳代謝を日本でも昔から行っている会社があります。
 
 それは、「リクルート」社です。
 35歳を過ぎると、退職金が上乗せされて退職するメリットを打ち出すことで、若手が活躍するフィールドを意図的に作っているのです。また、それによって、比較的人件費の安い若手で、事業を回し、人件費が高騰しない仕組みを作っています。
 
 
 あなたは、「長く働いてもらい、ぬるま湯文化になっていく」会社か、「健全な新陳代謝を行い、活性化した」会社か、どちらを選択しますか?
 


森田 英一(もりた えいいち) beyond global グループ President & CEO
大阪大学大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて人・組織のコンサルティングに従事。その後シェイク社、beyond global社を創業。日系企業のグローバル化支援事業を手掛ける。社員の主体性やリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発ファシリテーションに定評がある。日本全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。主な著作「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(PHP新書)など。日経スペシャル「ガイアの夜明け」「とくダネ!」などメディア出演多数。シンガポール在住。シンガポール在住。
人と組織の可能性を拓く beyond global グループ(シンガポール・タイ・日本)
グローバルリーダーシップ研究所
Email: info@beyond-g.com

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