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危うし!日系企業の常識・非常識

2020年1月7日

東南アジアにおいて、企業の経営理念は押し付けになる?

グローバル人事・組織開発のプロが斬る! 次世代のアジア地域における、これからの強い日系企業とは?

経営理念の話は敬遠されがち?

 新年には、経営理念や経営の原点を話したくなる人も多くなると思いますが、日本で経営理念の話をすると、社員から「またこの話か」「綺麗事だよね」「はいはい」というような反応をもらった経験がありませんか?
 
 そういった失敗体験があると、東南アジアでも、そのようなエピソードを披露すると、「日本的考え方の押し付けになってしまうのでは?」という懸念や、「東南アジアの人たちには、滑ってしまうのではないか?」という心配から、経営理念や、経営の原点の話を避けてしまう駐在員も少なくないのではないでしょうか。
 

東南アジアにおいて、経営理念は意外にウケる!

 しかし、私の経験では、東南アジアにおいて、日本企業の経営理念や経営の原点、創業者の話などは日本国内よりも、すこぶる反応や評判がいいことが多いと感じています。
 
 日本企業はそもそも、企業体質として、仕事というものに対する捉え方がかなり特殊な側面があります。それは、とことんより良い仕事をしようと努める職人気質や、自社やお客様のことだけではなく、社会(世間)に貢献できてこそ良い商売といえる「三方よし」の経営哲学、そして目の前の仕事を大切に一生懸命やることこそ次の受注につながるのだという「仕事の報酬は仕事である」といった、どこか日本人の価値観の根底に流れる、独特の考え方です。
 
 日本人以外の人からすると「?」となる行動や言葉が多く、理解が難しい場合があります。しかしその根底にある理念や哲学を丁寧に説明すると、東南アジアの方々にもよく理解してもらえるのです。
 

特に受けが良い経営理念、実際のケース

 創業者の創業ストーリーや、経営危機をどのように乗り越えたかというようなひと昔前の「プロジェクト X」的な話は特に受けがいいです。
 
 私は、経営理念浸透のためのワークショップを実施する際に、その会社の歴史の中から、そのようなプロジェクトX的な「オイシイ話」をケーススタディ形式にして「この時、弊社の社員はどのような意思決定をし、行動したでしょうか?」というようなクイズワーク形式にして、自分たちで考えてもらった上で、自社の先人がどのような意思決定をしたかをドラマチックに発表したり、その時のエピソードを知っている人に生の話をしてもらったりしています。そのような話は、東南アジアの社員の心に深く染み渡るようで、こういった話をきっかけに、社員のモチベーション、エンゲージメントが上がり、主体性が高まったという話は数多くあります。
 
 読者の皆さんも、部下の方々に、会社の原点や会社のミッション・ビジョン・バリューなどを表す経営理念を、ストーリー(物語)を交えて伝える機会はなかなか作れていないかもしれません。この機会に、一度そのような場を部下の方々と考えてみるのも一案です。
 

 


森田 英一(もりた えいいち)
beyond global グループ President & CEO

大阪大学大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて人・組織のコンサルティングに従事。その後シェイク社、beyond global社を創業。日系企業のグローバル化支援事業を手掛ける。社員の主体性やリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発ファシリテーションに定評がある。日本全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。主な著作「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(PHP新書)など。日経スペシャル「ガイアの夜明け」「とくダネ!」などメディア出演多数。シンガポール在住。シンガポール在住。
人と組織の可能性を拓く beyond global グループ(シンガポール・タイ・日本)
グローバルリーダーシップ研究所
Email: info@beyond-g.com

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