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会計・税務相談

2019年10月25日

Q.乗用車の使用に関する 現物給与の計算方法

Q : 会社から乗用車を貸与された場合の現物給与に関する課税所得の計算方法が変更されることになったそうですね。

 

A : 従業員が雇用主から乗用車を貸与されて通勤や業務外の目的に使用する場合、現物給与として課税所得に含める必要があります。2020賦課年度(2019年の所得)から、乗用車の使用に関する現物給与の計算式が変更されます。

 

Q : どのような計算式で現物給与を計算するのでしょうか。

 

A : 以下は、雇用主が新車を購入して従業員に貸与した場合の計算式について、2019賦課年度までと2020賦課年度からを比較したもので、赤字の部分が変更になりました。
 
2019賦課年度まで(旧計算式)
3/7 ×(取得価額- 残存価額)/ 10年 + 走行費料率 × 私用走行距離
 
2020賦課年度から(新計算式)
3/7 ×(取得価額 – 特恵車両登録税(PARF)還付金)/ 10年 + 3/7 ×
雇用主が負担した走行費の実費
 
 なお、上述の計算式は、雇用主が新車を購入して貸与した場合であり、中古車、車両所有権(COE)を更新した車両、レンタカーの場合には、計算式の一部が異なります。
 

Q : 計算式の意味を教えてください。

 
A : 計算式の前半は、車両の年間償却費を算出することにより、車両の取得費用に関する現物給与を計算しています。年間償却費を計算するための基本的な考え方は、旧計算式も新計算式も同じで、COEの有効期間である10年を耐用年数とした上で、取得価額から残存価額を控除して償却額を算出し、10年で定額償却した場合の年間償却費を計算しています。取得価額は車両の購入金額で、登録料、追加車両登録税(ARF)、COE、物品税、付属品の価格などを
含みます。

1994年に定められた旧計算式の「残存価額」は、2002年4月までに登録された車両に適用されたPARFを指す。PARFは、車両の所有者に新車への買い替えを促すために1975年に導入された制度で、登録から10年以
内に次の新車に買い替えた場合、新規車両のARFを値引きするというもの。1990年11月から2002年4月までに登録された車両が9年超10年以内に登録抹消した場合のPARFは、輸入時に税関から査定された公開市場価格(OMV)の80%とされていた。2002年5月の登録からPARFはARFに連動され、2008年9月1日からは、PARFを現金で還付してもらうことも可能に。税
務上は、2002年5月以降に登録された車両についても、OMVの80%を残存価額として使用してきたが、今やOMVの80%がPARFとして適用される車両がないことから、「残存価額」について登録から9年超10年以内に登録抹消した場合のPARF(現行ではARFの50%)に改正。

 
 計算式の後半は、車両の走行費に関する現物給与を計算しています。旧計算式では、走行費の現物給与について、雇用主がガソリン代を負担する場合S$0.55/km、従業員がガソリン代を負担する場合S$0.45/kmと料率を定め、従業員に年間の私用走行距離を申告させて計算していました。新計算式では、まず雇用主に当該車両について負担した年間走行費の総額を算出させ、その3/7を現物給与と見なすことにしています。ここでいう走行費は、道路税、自動車保険、ガソリン代、駐車場、ERP、修繕費などを全て含みます。
 

Q : 計算式の変更によってどのようなことに注意しなければならないでしょうか。

 
A :これまでは、雇用主から乗用車を貸与された従業員は、年間の私用走行距離を記録していなければなりませんでしたが、今後その必要はなくなります。代わりに、雇用主は、従業員に貸与する乗用車について、会社所有かレンタカーかを問わず、年間走行費の総額を車両別に計算しなければならないため、車両番号などで識別できるように記録する必要があるでしょう。また、従業員による車両の休日利用などについて、一定の使用料を徴収して現物給与が生じないようにしている場合、使用料の金額が新計算式における現物給与の金額と一致しているかどうか見直す必要があるでしょう。

斯波澄子(Toricor Singapore Pte.Ltd.

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