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会計・税務相談

2019年8月26日

Q.シンガポールにおける法定監査

Q : 昨年、シンガポールで会社を設立し、もうすぐ初年度の決算を迎えます。シンガポールで会計監査を受ける必要があるでしょうか。

 
A : シンガポールでは、2002年まで規模の大小を問わず全ての会社に会計監査人による法定監査が義務づけられていましたが、その後徐々に緩和され、免除私会社(Exempt Private Company)のうち収益が5百万Sドル以下の小さな会社や休眠会社については、法定監査が免除されるようになりました。ちなみに、免除私会社とは、株主数が20名以下で、法人が直接または間接に株主でない非公開会社を指します。
 2015年の会社法改正により「小規模会社」という概念が新たに導入され、収益が5百万Sドル以下の免除私会社に替わり、この概念に該当する会社について法定監査が免除されるようになりました。小規模会社とは、以下の1、2の要件を両方とも満たす会社を指します。
 
1 対象となる会計年度を通して非公開会社であること
2 対象となる会計年度の直前の2会計年度について、以下の3つの要件のうちの2つ以上を満たすこと
(a)当該会計年度の会社の収益が1千万Sドル以下である
(b)当該会計年度の期末日における会社の総資産が1千万Sドル以下である
(c)当該会計年度の期末日における会社の従業員数が50名以下である
 
 ただし、会社に親会社や子会社がある場合、上記の2の要件は、会社単体でなく親会社と子会社を含めたグループで満たさなければならず、(a) (b) (c) について「会社」を「グループ」と読み替えて2つ以上の要件を満たす場合、シンガポールの会社の法定監査が免除されます。なお、親会社と子会社にはシンガポール国外で設立された会社も含まれます。
 

Q :「親会社」「子会社」は 、それぞれどのように定義されるのでしょうか。

 
「親会社」「子会社」「グループ」の定義は、シンガポールの会計基準に定められており、他の会社を支配する会社を「親会社」、他の会社に支配される会社を「子会社」、支配関係にある親会社と子会社をまとめて「グループ」と定義しています。ここでいう「支配」とは、投資先の会社の活動に関与する権利を有し、その権利の行使により投資先から得る利益に影響を及ぼしたりできることを意味します。例えば、投資先の議決権株式の過半数を所有する場合、株主総会を通して投資先を支配することが可能になりますが、仮に過半数を所有していなくても契約やその他の方法により投資先を支配することは可能であるため、議決権株式の所有割合だけで支配関係の有無を判断することはできません。
 

Q :「小規模会社 」の要件の2について、今期が初年度なので直前の2会計年度がありませんが、その場合はどうなりますか。

 
A : 新しく設立された会社は、第3期を終えるまで直前の2会計年度がありません。そこで、第1期および第2期については、それぞれ監査の対象となる会計年度について1と2の要件を満たしていれば、「小規模会社」と見なされます。
 

Q :監査の免除要件を満たせず法定監査が必要になった場合、まず最初に何をすればよいでしょうか。

 
A : 会計監査人を選任し、会計法人監督庁(ACRA)に届け出る必要があります。会社法では、原則として設立日から3ヵ月以内に取締役会の決議により会計監査人を選任すると定められています。監査人の任期は、次の定時株主総会までとされており、毎年の定時株主総会で改めて監査人を選任し直すことになります。
 

Q :初年度の会計期間について、設立日から12ヵ月以上に設定することも可能でしょうか。

 
A : 会社法では、初年度は設立日から18ヵ月以内に決算すると定められていますので、18ヵ月を越えなければ問題ありません。定時株主総会は、何れの会計年度においても上場する公開会社は決算日から4ヵ月以内、それ以外の会社は6ヵ月以内に開催する必要があります。

斯波澄子(Toricor Singapore Pte.Ltd.

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