シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第2回 ニュースとデータで読み解くアセアン業界動向

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2019年10月25日

第2回 ニュースとデータで読み解くアセアン業界動向

ベトナム自動車業界:販売2ケタ成長が続く、ASEAN域内で突出

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 

 インドネシアやタイなどASEANの自動車大国で足元の販売が低迷しているのを横目に、独りベトナムが高い成長を遂げている。19年8月の販売データをみれば、インドネシアとタイが前年比でそれぞれ12%、7%ずつ減少する一方、ベトナムが2割もの伸びを記録。販売規模は2万1000台超と大きくないが(インドネシアとタイはそれぞれ約9万台、約8万1000台)、それだけに将来的な伸びシロが期待できるわけだ。
 まず、ベトナムの8月の販売状況をまとめたニュースをご覧いただきたい。
 
8月の新車販売20%増の2.1万台、輸入車2.8倍
 
 ベトナム自動車工業会(VAMA)が12日発表した2019年8月の国内新車販売台数(VAMA非加盟企業を含む)は、前年同月比20%増の2万1483台だった。18年の輸入厳格化の反動で輸入車の販売が2.8倍に増え、全体を押し上げた。…(中略)…国内生産車の販売は14%減の1万2594台。一方、輸入車は178%増の8889台と大幅に伸びた。18年は年初から乗用車の輸入手続きが厳格化されたことで輸入車の販売が停滞しており、19年はこの反動で大きく伸びている。…(中略)…1~8月の新車販売台数はVAMA非加盟企業を含む全体で20万2567台となり、前年同期から20%増加。VAMA加盟企業の販売台数は19万2147台で、18%増えている。
(「亜州ビジネスASEAN」9月12日付ニュース)
 
 ニュースの中で言及されているように、同月の2割成長をもたらしたのは輸入車販売の急増だ。さらに言えば、政策要因に絡む輸入車販売の反動増によるところが大きい。ASEAN域内の自動車関税が18年1月に撤廃されたことを受け、輸入車の大量流入を警戒したベトナム政府は当初、安全基準の強化や手続きの複雑化など各種規制の強化を通じて数量を制限していたのだが(これにより18年前半の販売台数が低迷)、メーカー各社の規制対応が進む中で輸入台数・販売台数ともに18年後半から回復。長らく伸び悩んでいた分、足元で成長ペースが加速した格好だ。
 なお、販売の落ち込みは17年後半も表面化したが、これは18年からの関税撤廃を見越した消費者が買い控えたため。ふたを開けてみれば、規制強化によって18年前半に輸入台数が減少する(=全体の販売が落ち込む)という皮肉な結果だった。

 

 もっとも、19年の急回復は単に政策要因にとどまるものではない。その根底には、やはり経済成長に伴う国民所得の増加があるといえよう。ベトナムの実質GDP成長率は、19年に入ってからも高い水準を維持。第1四半期が6.8%、第2四半期は6.7%で推移している。
 
〈ブランド別ではトヨタが首位〉
 潜在成長性が期待されるベトナムの自動車市場にあって、最も人気のあるブランドはトヨタだ。18年のデータをみれば、トヨタの販売シェアが23.8%に上り、続くマツダの11.8%を大きく引き離した。このほか日系では、ホンダ(9.8%)や三菱自動車(3.7%)なども一定の存在感を示している。

 

ビンファストが納車開始、初の国産ブランド車

 

 コングロマリット(複合企業)大手ビングループ傘下の自動車メーカーであるビンファストは17日、同社第1弾となる乗用車「ファディル(Fadil)」を約650台納車した。国産ブランドの乗用車が顧客に届くのは初めて。…(中略)…ファディルはヨーロピアンスタイルのハッチバック車で、排気量1.4リットルのエンジンを搭載。車体価格は8月末までに購入した場合3億9490万ドン(約186万円)、9月からは4億6500万ドン(約219万円)となる。…(中略)…ビンファストは14日、北部ハイフォン市のディンブー工業団地で工場を開所。年産能力は乗用車と電気バイクそれぞれ25万台で、2025年に完成予定の第2フェーズではこれの2倍に引き上げる計画だ。
(「亜州ビジネスASEAN」6月18日付ニュース)

 

 ニュースで触れられているように、国産車という割には価格が安くない。むしろ、「この価格設定で海外ブランド車に太刀打ちできるのか」との疑念が生じよう。
 しかし、民族資本を育成したいベトナム政府は今後、国産車の普及を支援していくと思われる。当面の納入先は政府機関やビングループの業務提携先になるが(8月には配車サービスのファストゴーが「ファディル」を1500台購入すると発表)、長期的には一般消費者もターゲットにしていく戦略となろう。
(亜州IRアセアン編集部)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.351(2019年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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