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日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2019年4月22日

第10 回 「ナショナル・ライブラリー(シンガポール国立図書館)」

完成年:1995 年/設計:ケン・ヤング/施工:西松建設

 ネットメディアなどを通じて、東南アジアの建築がとみに脚光を浴びている。特徴は、斬新な緑化建築や風通しの良おおらかな半屋外空間である。この様な建築作品を先行して設計していたのが、マレーシア出身の建築家、ケン・ヤングである。

 若者がたむろするブギス地区に、近未来的イメージを抱かせる巨大な白亜の建物がある。国立図書館だ。この作品は、日本の丹下健三も参加した国際コンペティションにて選ばれた、ケン・ヤングの作品だ。因みに、この建物があるミドルロードは戦前、中央通りと呼ばれ日本人街だったが、区画整備の関係で今はその面影もない。
 建物は敷地いっぱいに建てられており、一見するとボリューム感を感じる。迫り出した大小無数の庇(ひさし)が水平方向を強調し、ヨットの様な流線型が綺麗だ。背後にあるガラス張りの図書空間の存在感を抑えると同時に図書室に差し込む光を調整している。敷地内に入ると巨大な吹抜けが現れる。この吹き抜けは屋内空間の換気にも利用されている。地階の広場は直射日光を遮り、風通しが良く憩いの場として機能しており、外見とは対照的におおらかな半屋外空間が広がっている。図書館の中に入ると、天井の高い贅沢な図書室があり、間には緑化されたテラスが点在しており、休憩に丁度良い。

 施工は西松建設が担当。躯体(くたい)は重量鉄骨造だ。運搬は深夜帯に行われたが、敷地が都心の繁華街近いため、夜間でも交通量が多く一部側道を規制しながら搬入が行われた。当初鉄骨は全てトラス(*1)になる予定だったが、軽量化のためにプレートガター(*2)と重量トラスの組み合わせとなった。建て方は建て逃げ方式という、建物の片側から一方向に建てていく方式で施工された。

*1:三角形の部材同士をつなぎ合わせた構造形式。
*2:鋼板や形鋼を組み合わせて板状にし、断面が I 字型になるように組み立てた桁(ガーター)からなる鉄橋。

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。
同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.344(2019年4月1日発行)」に掲載されたものです。

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