シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第11回「UOBプラザ 」

日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2019年4月25日

第11回「UOBプラザ 」

完成年:1995 年/設計:丹下健三/施工:西松建設

 東京都庁を思わせる意匠の高層ビルが、新宿副都心と似た印象を与える CBD(Central Buisiness District) のスカイラインを彩っている。この既視感は都庁を設計した建築家、丹下健三が東京都庁の設計と近い時期に設計したためだ。また、新宿副都心と CBD のスカイラインも丹下氏がガイドラインを敷いたらしいが、詳しい情報は公開されていない。

 建物の高さは法規が定めていた最高軒高の280メートルで、近接しているリパブリック・プラザやワン・ラッフルズ・プレイスと同じ高さ。因みに「28」は中華風水の吉数であり、法規が風水の影響を受けている事はユニークな事象だ。タワーの平面は風水で縁起の良い八角形になっている。地階は上部を覆う建物が屋外の雨と日光を遮り憩いの広場となっている。この空間はシンガポール川を借景としており、対岸のアジア文明博物館がよく映える。ラッフルズ・プレイスとボートキー地区を緩やかに繋ぐこの広場の片隅には、ダリの彫刻がさり気なく置かれていたりもする。
 施工は国際入札を勝ち取った西松建設と、ラムチャンの共同企業体が請け負った。構造はコアが鉄骨鉄筋コンクリート造で、一般部が鉄骨造となっている。外壁はガラスと御影石(火山岩を用いた石材)をアルミ枠に組み込んだカーテンウォールだ。施工の際の困難は約2年間という短い工期と、高さ 280 メートルへコンクリートを圧送する事だった。圧送する際の生コンクリートの温度上昇を抑えるべく、作業は夜間に行われ、24 時間体制の工事となった。これによりコンクリートを流し込む作業行程の短縮が可能 になり、工期に間に合った。また、工期を短縮する為に、作業の単純化と仮設設備の充実を計るなどの工夫もしている。

 

著者プロフィール

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.345(2019年5月1日発行)」に掲載されたものです。

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