シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第13回「JEWEL」

日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2019年5月25日

第13回「JEWEL」

完成年:2019年/設計:モシュ・サファディ/施工:大林組

 

 
 シンガポールが誇る世界一の空港「チャンギ空港」が更なる進化をするべく、大型商業施設「ジュエル(Jewel)」が4月17日にオープンした。その名の通り、宝石の様なガラスとアルミのドームで覆われた構造体はチャンギの新たなシンボルとなった。
 
 施設内には人工の緑化空間が広がっており、世界各国から集めた3000本に及ぶ樹木や生垣が植えられている。「管理された自然」というシンガポール建国以来の主題の集大成とも言えよう。
 
 他にも鏡の迷路、巨大なスライダー、実物大の動物トピアリー(草木を刈り込んだ造形物)、空中の遊歩道、スカイネット(空中散歩用ネット)に加え280もの商業施設などが入っている。
 
 施設内にはレイン・ボーテックスと呼ばれる高さ40メートルの世界最大級の屋内人工滝がある。マリーナベイサンズ(MBS)にも共通しているが、滝は良い「気」を集めるほか、外観の球状の形態は邪気を攪拌(かくはん)するとも言われている。
 
 この様な風水を意識した設計は、設計者であるモシュ・サファディの得意とする領域であり、同氏によるMBSも風水抜きでは語れない。
 
 施工は大林組とウォーハップの共同企業体が手掛けており、曲面を構成する9600枚に及ぶ特注ガラスは米国から注文している。6000トンにも及ぶ巨大な覆いは、高さ12メートルの枝状の柱で支えられており、同時にこの柱は空中遊歩道の支えにもなっている。図面は全てBIM化*し、管理されている。複雑な曲面を有する建物の建設をする際にBIMは必須である。BIMはまた、様々な建設プロセスもシミュレートできるので、ターミナル1とジュエルをつなぐ空間の設計にも寄与した。
 
* 立体情報、二次元図面、施工過程が全て1つのデータに統合された情報

 

著者プロフィール

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時に渡英する。2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。2012年に渡星、現在は、チュラロンコーン大学の国際建築学科(INDA)にて教鞭を取る。スペインのログロニョで行われた設計競技で優勝。シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.346(2019年6月1日発行)」に掲載されたものです。

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