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日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2018年8月31日

第3回 DUO

竣工:2017年 設計:BURO OLE SCHEEREN+DP Architects Pte Ltd / 施工:大林組


シンガポールにおいて風水は、実践はすれど、公言されない。一民族の習慣を表に出し過ぎないようにという社会の配慮であろう。

 

今回、紹介するDUOはその中でも不思議な風水的構成で設計されている。まず、敷地の向かいに極端に鋭利な先端部を有する「ゲートウェイ」と呼ばれる建築作品がある。ゲートウェイは建物の平面を見ると風水の吉数である「八」を意識した形になっている。が、同時に風水的には鋭利な形状のものの先には悪い気が溜まると言われており、DUOの建つ敷地は不吉といわれていた。この様な負の風水を跳ね除けるためには球体や曲面を用いると良いといわれる。同時に曲面の多い建物や蛇行する地形は風水的に良い気が流れる。これらの配慮からDUOは曲面を多用しており、それは同時に風の負担も減らしている。また、DUOはゲートウェイと同じ様に双塔の意匠となっており、両方の建物の間を抜ける気を阻害しない。それぞれの塔はコンド棟とホテル・オフィス棟となっており、地上50階の複合施設だ。建築家のオレ・シャーレンは他にもジュンガの様な異様な外見が目を引くコンドミニアム「インターレース」の設計も過去に担当している。鋭角が多いことからDUOと同じように円を様々な箇所に用いており、興味深い。

 

DUOの施工は大林組が行なった。近年、シンガポールでは建築許可を得るための図面はBIMでの提出が求められるようになった。BIMとは立体情報、二次元図面、施工過程が全て一つのデータに統合された情報だ。大林組はBIMを用いて施工手順を時間軸上でシミュレートして施工性を確認した。BIMを用いて施工された建築としては、この物件は最初期の例である。また、下部に支持構造がなく、塔本体より迫り出していて目を引く跳ね出し床は、50年後に建物上階での水平変位を規定許容値以下にコントロールするべく仮設ベント柱(構造体)で支えながら施工された。

 

著者プロフィール

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。
2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。
同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。
2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。
スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。
シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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